相続・遺言のルール変更(民法改正)

 平成31年1月以降、相続や遺言に関する民法の改正が行われます。今まで長い間変わっていなかった相続や遺言などのルール(法律)が変わったことで、実際に注意をしなければならないことも多々あります。どちらかと言うと利用する側に有利な方向にルール変更がなされたものが多いのですが、このルール改正は期間を分けて開始(施行)されることもあり、勘違いがあると大変です。こちらでは大きく変わった点をご紹介いたします。

 

◆こちらでのご紹介内容

 平成31年以降に施行される相続・遺言等の民法改正は多岐に渡り、細かな点も改正されることとなります。この改正は、明らかに新設や削除されたルール改正と、実務上行われてきたことを明確に法律として記ししたルール改正があります。こちらではその内、「新設されたルール改正」について主な点をご紹介いたします。

 

◆変更点と変更時期

 この度のルール改正は、大きく4回に渡って順番に実施されていきます。そのため、「どのように内容が変更されるのか」、だけではなく、「いつ変更されるのか」も大切です。変更が実施されるまでは古いルールが適応されるので以下に変更点とその実施の時期をご紹介いたします。

 

<第1回目の変更>

時期:平成31年1月13日から

 

 変更される内容

☆自筆証書遺言が一部手書きでなくても良くなります。

 自筆証書遺言は今まですべてを自筆、つまり自分の手書きでなければ効力が発生しませんでした。しかし、もし財産が多い場合は手書きでその財産を全て記載することはとても大変です。そのため、財産の目録の部分のみは手書きでなくても良い、というようにルールが変更されました。これで財産の数が多い場合や、手書きをするのに大変である場合などでも、自筆証書遺言の作成が楽になります。

 なお、手書きでない財産目録の部分であっても、署名押印は必要です。何枚にも渡る場合は全ての用紙に署名押印が必要です。用紙の両面に目録を記載した時は、両面に署名押印が必要です。また、手書きではない目録であっても、加除訂正する際は自筆証書遺言の本文と同じく、訂正箇所を示し、変更した旨を記載し、署名をして、加除訂正箇所に押印をするという、同じ手続きが必要になりますので、目録が手書きでなくても良いことに油断してこれらを忘れてしまうことの無いように注意が必要です。

 

<第2回目の変更>

 始まる時期:令和元年7月1日から

 

 変更される内容

☆妻への不動産の贈与と特別受益

これは、20年以上の夫婦の一方が住むための建物や土地を生前に贈与していたとき、その分の財産は特別受益には当たらない、というルール改正です。

 亡くなられた方が生前に相続人に対して財産を与えていたとき、その財産を「特別受益」と言います。そして遺産分割では、相続財産の額から、既に受取ったその特別受益の額を差し引いてどれだけの額を相続するかを決めて行きます。相続財産の先払い、という表現は正しくありませんが、分かりやすいかもしれません。

 この特別受益ですが、兄弟間の争いではよく耳にします。兄は大学へ通ったからその授業料は特別受益だ、とか、弟はマンションを買ってもらったからその費用は特別受益として考慮すべきだ、などです。妻や夫への贈与では特別受益で争いになることは比較的少ないと思いますが、仮に妻が生前に不動産を与えられており、それが特別受益だということで相続する金銭の額が減ってしまうと、その後の生活に影響が出てしまいかねません。

 このような恐れを考慮し、妻(夫)の生活を優先し、住むための建物や土地は相続の際も特別受益として扱わないというルールに変更されます。このようなことを「持ち戻しの免除の意思の推定」と言います。

 

☆すぐに預貯金の一部が下せることになります。

 亡くなられた方のお葬式や法要にはお金がかかります。しかし、相続人もその費用を工面することは大変です。亡くなられた方の預貯金は、原則として死亡の際に凍結されてしまい、相続人であっても勝手に下すことはできません。次お金を下ろすことができるのは、相続人全員で遺産分割協議をした後になるというのが一般的な流れです。これでは喪主をされる相続人は困ってしまうことになります。

 そのため、ある一定額までは遺産分割をする前であっても、相続人が一人で手続きをしてもお金を下ろせるようにルールが変更されます。金融機関によっては、今までも葬儀費用として下すことができる場合もありましたが、それは金融機関独自の判断であり、全国共通ではありませんでした。令和元年7月1日からは法律としてルール化されますので、どの金融機関でも一定額を下ろすことが可能となります。

 なお、一定額とは、相続財産の預金額の3分の1までであり、相続人一人が下せる額はその3分の1に相続人の相続分をかけた割合までとなります。また、150万円を超えることはできません。

 注意点としては、各金融機関毎に独自のルールで手続き方法などが変わる可能性もありますので、具体的には各金融機関と相談しながら進めていく必要があります。

 

☆遺留分の算定と、特別受益の期間

 遺留分とは遺言書があるとき、相続人が最低限は相続できる分です。子供二人が相続人であるとき、遺言書で弟のすべての財産を相続させる、と残っていても、兄は遺留分が4分の1という決まりがあるので、弟に残された相続財産から4分の1は取得できることとなります。

 この遺留分ですが、遺言をした人が亡くなったときに残っていた財産のみでなく、過去の贈与の分も相続財産として考えることができます。その内、相続人への「特別受益」は今までは期間の決まりはありませんでしたが、「相続開始前10年間」という期限が設けられました。そのため、10年以上前の特別受益については遺留分の算定に加えることができなくなり、算定はより簡単になりましたが、遺留分権者にとっては遺留分の額が減ってしまうことになります。

 

 なお、今までは遺留分の請求を「遺留分減殺請求」と言っていましたが、改正後は「遺留分侵害額の請求」と名前を変えました。これは遺留分の請求について、今までは遺留分減殺請求という特別な請求として設けられていたものが、改正後は通常の債権と同様の考え方をするようになったためです。そのため、遺留分侵害額請求後の消滅時効も考えなければならなくなりましたので、この点も遺留分権者にとってもは不利に働くこととなります。

 

 

<第3回目の変更>

 始まる時期:令和2年4月1日から

 

 変更される内容

☆配偶者の居住の権利が新しく設けられます。

 今までは土地や家屋等は所有権としてしか相続できませんでした。そのため、例えば亡くなった父(夫)の不動産を引き継ぐ場合、下の世代に引き継いで行こう、と考えるとその子供が相続することとなります。しかし、その場合は母(妻)は不動産について所有権を持つことができず、ずっと夫と暮らして来た土地や家であっても、所有権を引き継いだ子が「お母さん出て行ってくれ」と言い出したとき、所有権を持たない母(妻)は法律的にはそのまま住み続ける根拠が無く、困ってしまいます。

 このようなとき、不動産の所有権は子供は相続し、しかし居住権とい権利を母(妻)が相続すれば、他の相続人に所有権が渡っても、妻は居住権を相続すれば、その不動産に住み続けることができると考えられます。そのため、相続の際は所有権と居住権とい権利に分け、それぞれを別の相続人が相続することができるようになります。

 

<第4回目の変更>

 始まる時期:令和2年7月10日から

 

 変更される内容

☆自筆証書遺言を法務局で保管できるようになります。

それまでは自筆証書遺言を作製したら、自分自身で保管しなければなりませんでした。そのため自筆証書遺言の保管は頭を悩ませることがありました。簡単なところに保管しておくと何かに紛れて紛失したり、隠しておきたいのに誰かに見られてしまうかもしれません。見つからないところに隠しておくと、ご自身が亡くなられた後も見つかることなく相続手続きが進んでしまうこともありました。貸金庫に入れておいても、相続の終わりまで貸金庫が開けられず、いざ空けてみると遺言書が見つかり手続きのやり直し、なんてことも考えられます。

そのため、法務局が自筆証書遺言を預かるルールが新設されることになりました。遺言書を法務局に預けておけば紛失の恐れはありませんし、ご自身が亡くなられたあとも相続人が法務局に問い合わせれば遺言書の有無が確認でき、手続きが終わった後から見つかってしまったということも少なくなるでしょう。

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