日記20140728 認知症の人が遺言書を作るのに必要なこをと考えてみる

「認知症の父は遺言書を作ることができますか?」という相談が当事務所には少なからずございます。もちろん父だけではなく母であったり配偶者であったりします。そのような時は「認知症であっても遺言書は作成できますが、様々な状況を考えなくてはいけませんので、相談者様の場合について一概にお答えすることは難しいです。」とお答えいたします。

 

認知症となってしまったことと遺言書を作成できないことはイコールではありません。認知症と診断されても遺言書を作成できます。しかし認知症の症状が重ければ遺言書を作成しても無効となってしまいます。

 

「ではその明確な基準はどこか?」これが皆様が知りたいところですよね。その基準は…  実は明確に答える事ができません。認知症の症状は人によって様々であり、また時期によって軽くなったり重くなったりしますし、明らかに人との会話が成り立たないと思われる場合以外は微妙な判断であり、ましてや私には絶対判断ができません。

 

そして、認知症の診断は医学的な判断であり、遺言書する事ができるかどうかは法的な判断で、前者は医師が、後者は最終的には裁判官がする事になります。かかりつけの医師に「遺言書が作成できるかどうかの診断書を書いて欲しいとお願いしたら断られた」という話を聞いたことがありますが、医師には遺言書が作成できる能力があるかどうかを判断することは難しいでしょう。

 

 

それでは上記を踏まえ、公正証書遺言を作成できるかどうかの基準について私なりの考えを書いてみたいと思います。

この場合以下の点に限定されますのでご注意ください。

 

◆公正証書遺言を作成する場合に限ります。

   自筆証書遺言は一人で密室で作成できてしまうので、作成した時点での状況など判断できないためです。

 

◆行政書士など第三者がサポートする場合に限ります。

   私がお伝えできるのは私がサポートして来た場合での経験です。そのためご本人が一人で作成する場合の公証人とのやり取りなどは残念ながら私は経験できませんので、その場合はまた違ったものになるかも知れません。

 

◆あくまで私の中でのひとつの基準です。

   公証役場は場所ごとに手続きに多少の違いがあります。(もちろん法を逸脱するような違いはありませんが) そのため、すべての公証役場にて私の考えが通用する訳ではありませんし、私の考える基準はたくさんあるやり方の中でもひとつの参考です。そんな曖昧な基準でも少しは役に立つかと思いここに記載しましたので、不安な方でも落胆される事はありません。

 

 

それでは公正証書遺言を作成するのに必要なこととは…

「法律としての相続と遺言についてある程度理解ができること、そして会話ができること。」であると考えます。

 

もちろん現在において知らなくても公正証書を作成するまでに勉強すれば良いのです。また、すべてを知らなくても基本的なことと、自身が遺言書に残そうと考える部分で大丈夫です。

しかし、もし理解ができないようでしたら公正証書として遺言書を作成することは難しいかもしれません(絶対に無理とは言えませんが)

 

こう考える理由は公正証書遺言を作成する際に公証人より意思確認があるためです。この意思確認ですが、健常な方でしたら全く心配はいらないものです。しかし認知症を患っている方にしてみたらなかなか難しい部分がございます。

意思確認の方法は公証人によって異なります。私がサポートした場合ですと原案を読み上げて間違いないですか?と確認する場合もありますが、「土地は誰に相続させますか?」などと積極的に答えさせるという公証人もいます。前者の場合は原案に目を通したご本人は問題ないと答えられるかもしれません。しかし、後者の場合は少し難易度が高くなるでしょう。

 

この「土地は誰に相続させますか?」という質問が曲者です。相続と言うルールを知った上で遺言書にてその相続分などを変更させるという事を知っていなければなりません。健常者でしたら「相続させる?私は土地は次男にあげるよう遺言したいのですが…」など難しい言い回しなどは質疑応答でクリアできますが、認知症の方だと突然の難易度の高い質問に上手く答えられない可能性があります。(相続について知っていてもこの質疑応答に難があれば遺言書の作成は難しいかもですね)

また、「相続させる」というのは実務上のテクニックで、相続させるなどと言う言葉を使用しなくても遺言書は有効です。もちろん公正証書の原案には「相続させる」と書いてはありますが、確かに遺言はするけど相続させるという言い方はちょっと違和感があるかもしれません。

 

 

これらの意思確認のための質問を答えるには「法律としての相続と遺言についてある程度理解ができること、そして会話ができること。」がやはり必要かと思います。

「土地は妻、建物は長男、預貯金は次男にあげたい」と思っていても相続や遺言についての理解がなければ「土地は誰に相続させますか?」の質問にも「???相続?わたしは土地は妻にあげたいと思っているけど相続させるとはどうゆうこと?」と困惑してしまい上手く質疑応答できないと公正証書の作成には暗雲が立ち込めてしまうでしょう。

 

しかし、私が考える基準はあくまで参考のひとつです。遺言者の意思、公証人との調整、遺言者とのコミュニケーションなどを慎重に行えば難しい思う場合でも遺言書を作成できる可能性はあります。しかし、それでも遺言書を作成することが難しいと判断されればそれはそれでより良い判断なのだと考えましょう。無理やり作成すると後々にトラブルをこじらせると裁判など大事になりかねません。

 

認知症の方は遺言書を残せないなんてことはありません。そもそもお年を召された方は少なからず認知症の症状はあるでしょう。(物忘れや会話が理解できないなど) それでも遺言書を残したいと思われる気持ち、遺言書を残さなければならない状況など、これらは尊重されるべきです。認知症の方が遺言書を作成できる場合もあればできない場合もあるでしょう。しかし、もし作成できる可能性があれば少しでもそのお力になれればなぁ、と改めて思う今日この頃でした。

 

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