遺言書は相続の対策として残され相続人にも、またご自身の財産管理や残された方々へのメッセージとしてとても意義のあるものです。しかし、遺言書を残される方が高齢で、認知症であったり、また判断能力が低下しており認知症の疑いがある場合は、どのように遺言書を残したらよいのでしょう。

遺言能力を知る

「遺言能力」とは「遺言書を残すことができる人は最低限このような能力がある人ですよ」というものです。そのため遺言能力がある人は遺言書を残すことができます。しかし、この遺言能力が実際にどの程度なのか、はとても重要である半面、実は明確に基準を示すが困難な場合が多いのです。

  • 民法の遺言能力

民法の上では遺言能力に関する決まりが以下のように示されています。

 

★「15歳に達した者は遺言をすることができる。」(民法961条)

★「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。」(民法963条)

※「成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。」(民法973条②)

 

★の二つの条文を読むと「15歳以上であれば遺言書を残せる」と読み取れます。この二つの条文以外では※の条文にて成年被後見人の場合のみが記載してあります。

法律の上では未成年者でも15歳を過ぎれば遺言能力があるため、かなり広い範囲で認められていることとなります。また、判断能力などにハンデキャップがある人に対しては成年被後見人の場合だけ規定があり、それ以外には特に遺言書を作成するためには制限がありません。

 

  • 判例や学説の遺言能力

上記のように民法上では基本的な遺言能力についての条文は二つしかありません。しかし、この二つを満たしていてる人が遺言書を残しても、その遺言書が無効であるとの判決が出された裁判が多数あります。この事実より、判例や学説での遺言は以下のようになるでしょう。

◆遺言書の内容やその法律効果を理解し判断することができるかどうか。

◆認知症などを患っていたら、遺言当時の認知症の症状はどの程度であったか。

 

判例や学説での遺言能力の基準はたった上記2項で示されるような単純な物ではありませんが、民法上の条文で示されている内容と比べると、遺言の能力があるかないかを厳しく判断していることがわかります。

高齢者の遺言書の問題点

上記の遺言能力を踏まえ、高齢者の遺言にはどのような問題があるでしょう。やはり「残された遺言書が有効な物であるかどうか」です。また、それとは別に「判断能力がない状態で相続人が自身に都合のよい遺言書を書かせたのではないか」という疑念の発生です。

もし、このような問題が浮上した場合、どうしても納得できないと言う相続人がいれば裁判などで解決するしかありません。本来、トラブルの防止という観点で有効な遺言書が、たちまちトラブルの種となってしまうのです。

そのため、遺言書を作成する際、「遺言能力があるかどうか」「有効な遺言書が作成できるかどうか」についてはどのように判断したら良いのでしょう?

 

高齢者が遺言書を残す時の注意事項

高齢の方が遺言書を残す場合には後からのトラブルとならないよう、遺言書作成のの時点で以下のようなことに気をつけましょう。

  • 公正証書遺言で残す

自分でつくる自筆証書遺言は秘密裏に作成することができますので、高齢者でないい方が作成した遺言書でも法的要件の不足などで無効となってしまう可能性があります。そのため、少しでも判断能力に不安があるならば遺言書の法的要件に関して安心ができる公正証書遺言での作成を行いましょう。公正証書遺言であれば公証人が作成し証人の立ち会いもありますので、より信頼できる遺言書となります。

しかし、公証人は医師ではなく、遺言者の判断能力の有無までは確定できません。もし認知症などの不安がある方は以下にご案内する医師の診断を受けておくことも検討しましょう。

医師の診断を受ける

認知症の症状を判断できる病院にて診断を受け診断書を作成することが良いでしょう。これにより判断能力の程度を客観的に証明することができます。この診断書の作成には遺言能力について医師と理解を共有し、後に遺言能力に問題が無かったことがはっきりわかる記載してもらえばなお良いでしょう。(下記※追記※参照) この場合、診断を受ける側も遺言能力についてのあらかじめ理解しておくことが必要です。

また、ご自身で意識がはっきりしており遺言書の作成には問題ないと自信がある方でも、トラブルの回避のためには医師の診断を受けることをお勧めします。

 

※追記※

医師の診断書に関してお問合せが多く、また誤解を与えてしまうような記述でしたので追記をさせていただきます。「遺言書の作成」と「医師の診断書を取る」ことは基本的には別の行為となります。遺言書の作成のために遺言能力に問題がないことの証明に診断書を取得することは大変意味があることですが、医師に「遺言書を作成するための診断書を作ってください」とお願いしても聞き入れて頂けないことも多いでしょう。医師は認知症を医学的に診断しますが、遺言能力は法的に判断されるものです。

(本文にある「医師と理解を共有し〜」とあるのは長く付き合いのある主治医がいらっしゃるような方を想定してのことでしたが、実際はそのような方は大勢いらっしゃるわけではありませんので、誤解を与えてしまうような記述となっておりました。)

診断書はあくまで遺言書を残す方自身が遺言能力をよりはっきりさせるために添付するものです。診断書は医師に遺言能力を証明してもらうものではありませんので、この点に注意が必要です。

 また、遺言能力に疑問を持たれるような診断内容であった場合は遺言書の作成を諦めるという判断も必要です。

遺言書の作成において診断書の取得は必須ではありませんので、状況に応じて診断書を活用する必要があります。

 

  • 相続人や周りの人の関与

相続人や関係者が高齢者に対して遺言書の作成を勧める場合、周りに誤解を与えないような配慮が必要でしょう。遺言書の作成に関し皆で情報を共有するなどして、二人きりの時に遺言書を作成しないなどです。このような誤解があると、有効である遺言書も「無効なのではないか」などと主張されかねません。

また、遺言能力のない被相続人にあらかじめ用意した遺言書の草案を書き写させるなどして遺言書を作成した場合は相続の欠格者として疑われてしまう可能性があります。遺言者がご高齢な場合や、判断能力に疑問がある方の場合は、周りの方の慎重なサポートが必要です。

 

最後に

高齢者、特に判断能力が衰えている方や認知症の症状が疑われる場合、客観的に遺言能力を検討し、結果的に遺言書を残さないという判断も必要です。遺言書の作成を考えてらっしゃる方は専門家、公証人、場合によっては医師などと良く相談していただき、また、周りに親しい方がいらっしゃれば適切にサポートをしてあげることが大切です。

遺言書に関する相談・サポート

高齢の方の遺言書の作成に細心の注意を払わなければ、せっかくの遺言書が無効となったり、また逆にトラブルの種となりかねません。

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