登記の変更のススメ 登記名義人の住所変更を忘れずに

不動産は法務局に登記をすることでその存在を公にします。相続の手続きを行うとほとんど案件で登記された内容を確認するために不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得するのですが、かなりの割合で登記名義人の住所が現在の住所と異なっています。相続手続きにも影響が発生する登記名義人の住所とはどのような登記事項でしょう。

◆所有権の登記名義人の住所とは?

以下に登記簿謄本の表題部と権利部(甲区)の例を記載しました。不動産を公示する登記簿は表題部と権利部が1セットとなっています。権利部1番右の列の「権利者その他の事項」にはこの不動産の登記された名義人についての情報が記載されます。

表 題 分 (土地の表示)
所在 練馬区◎◎町一丁目
①地番 ②地目 ③地積 原因及びその日付〔登記の日付〕
1234番13 宅地 120,10 ③1234番13、1234番26に分筆
 権 利 部 (甲区) (所有権に関する事項)
順位番号 登 記 の 目 的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
所有権移転 昭和51年3月18日第15…号

原因 昭和51年2月23日売買

所有者 板橋区△△町1丁目1番1号

山 田 太 郎 

 こちらの例ですと、この土地の所在は表題部の「所在」と「地番」を見ると練馬区◎◎町一丁目1234番13となっているため、練馬区の土地であることが分ります。しかし、この土地の所有者である山田太郎さんの住所は権利部(甲区)を見ると板橋区△△町1丁目1番1号となっており、所有者の住所は板橋区にあることがわかります。

これが板橋区に住みながら練馬区の土地を購入し、自宅用以外の用途で土地を利用する場合であるならば問題ありませんが、練馬区に新たに土地と家を購入し、そこを新たに住所にする場合はどうでしょう。土地の所有者である山田太郎さんはマイホームとしてこの土地を購入したので、住所もこの土地のある練馬区になっていなければなりません。しかし、この様に引っ越し前の住所で登記してあることがとても多いのです。

◆引っ越し前の住所になっている理由

なぜ、引っ越し前の住所になったままなのでしょう。それは新居を購入し、引越し前に所有権の移転登記を行うからです。所有権の移転登記には所有者の住民票を併せて提出するのですが、まだ入居していない新居を買ったため、新居の所有権の移転登記の際に提出する住民票は必然的に引越し前の住民票となり、引越し前の住民票の住所が所有者の住所となってしまいます

本来は引っ越したあとに改めて住所変更登記を行うことで新しい住所が登記されることとなります。こちらは住所変更をした後の登記の例です。修正前の住所には下線により抹消され、新しい住所は付記登記により記録されます。

 権 利 部 (甲区) (所有権に関する事項)
順位番号 登 記 の 目 的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項

 

 

付記1号

所有権移転 昭和51年3月18日第15…号

原因 昭和51年2月23日売買

所有者 板橋区△△町1丁目1番1号

山 田 太 郎 

1番登記名義人住所変更 昭和51年4月21日第18…号

原因 昭和51年2月23日住所移転

住所 練馬区◎◎1丁目2番3号

しかし、新居を購入した後に登記名義人の住所の変更をしなければ前の住所のままで登記が残ってしまうということはほとんどの方はご存知ありませんので、そのままの状態でずっと登記されたままの場合が多いようです。

◆住所は変更しなければならないの?

それではこの登記名義人の住所は引越し後の住所に変更しておかなければならないのでしょうか。答えは「できれば早めの変更しておいた方が後から不具合が出にくい」というところです。それではもし住所をそのままにしておいた場合の不具合とはどのようなものでしょう。

<不動産の処分・抵当権の設定・相続など>

もしこの不動産を処分するときや、後に抵当権を設定するとき、また相続が発生した場合、改めて登記名義人に関する情報を登記所に提出しなければなりませんが、引越し前の住所のままである場合、前の住所から現在の住所に引越したと言うことを公的な書類で証明しなければなりません。とは言っても住民票には引っ越し前の住所が記載してありますので、特に大きな問題は発生しません。ただし、何らかの登記を行う際に住所に関する変更もしなければならない場合、申請の際に多少手間がかかったり、司法書士を利用する場合は別途に報酬が必要であるようなデメリットはあるでしょう。

<前の住所が証明できない>

通常であれば引越し前の住所を証明することはそんなに難しくありませんが、以下の様な場合は注意が必要です。

相続の手続きをする場合で、亡くなられてから数年が経過している

何度も引越しをしている。特に引越しの際に転籍(戸籍も引越し先に移す)も併せてしている場合。

住所を証明するためには住民票か戸籍の附票を用意することが一般的なのですが、これらの書類は役所によって異なりますが、一般的には除票となってから5年間しか保管されません。そのため、亡くなられてから5年が経つと住民票も戸籍の附票もとれなくなってしまったり、転籍されている場合は過去の戸籍も取得できないこともあります

もし住民票か戸籍の附票も用意できず、引越し前の住所と現在の住所との繋がりが証明できなければ、不動産に関する登記を行うことができなくなってしまいます。

(先の例ですと板橋区△△町1丁目1番1号の山田太郎さん練馬区◎◎1丁目2番3号の山田太郎さんの住所の繋がりを公的な書類で証明できなければ、住所が異なることで同一人物であるとみなされず、現在の住所での山田太郎さんは登記の申請の権利がある人物であるとはみなされなくなってしまいます。)

◆現在の所有権移転登記の際は?

相続手続きの際に引越し前の住所に関する問題が良く見受けられるのですが、現在の事情はどうでしょう。現在(注・平成27年現在)、居住用の自宅を購入する場合、条件に適合するケースでは登録免許税が減額される特例が設けられています。特例を適用させるためには既に居住地に引越した後に所有権移転の登記をすることが手続きを容易にさせますので、実際には入居や引越しをする前でも住民票を移し、移転登記を行いますので、新居購入による引越し前のままの住所による不具合は少ないでしょう。

 →〔参考〕国税庁HP 登録免許税の税額表 

◆住所変更は事前に済ませておきましょう

現在の所有権移転登記では引越し前の住所のままである危険性は減りましたが、以前に購入した自宅については住所が引越し前のままである可能性は十分あります。そんなに大きな問題となることもありませんし、問題が起きてもまだまだ先のことです。自分が亡くなったあとのことのために住所だけ変更するという面倒も避けたいところですし、そもそも所有権名義人の住所変更の登記は法律でも義務化されていません(不動産の地目や地積などの表題登記には変更登記の義務や罰金が課せられています。)

しかし、万が一、相続手続きの際にこのような小さな問題で相続人が困ってしまうのもつまらない話しです。小さなことですが、どのような状況となるか分らない相続のためにも、現時点で把握できる懸念点は今の時点で払拭しておくことをお勧めいたします

◆おまけ 抵当権抹消の手続きも忘れずに

上記にて登記名義人の住所の変更の手続き忘れをご紹介いたしましたが、相続手続きをしていて他にもよく見かけるのが「抵当権登記の抹消手続き忘れ」です。抵当権登記とは不動産の購入時のローンについて、不動産を担保として提供した場合に登記されるものです。

相続手続きでよく見かけるのが、借りた時期と額からしてすでにローンは返済し終わっていると考えられるのですが、登記簿上はまだ抵当権が残っている状態になっているものです。ローンは返済し終わっているので安心ですが、抵当権が登記上だけでも残っていると不動産の処分ができない、または不利になってしまいます。

抵当権登記の抹消忘れについても厄介なのが、いざ抹消しようとしても、必要書類を後から揃えることが困難なことです。ローンが終われば金融機関から抹消のための必要書類等を渡されるのが一般的です。しかし抵当権の抹消手続きを忘れてしまい、これらの書類を紛失してしまうと、再発行ができない書類も含まれているため、手続きがとても面倒になってしまいます。

登記手続きは難しいですし、そもそもお役所の手続きはとは面倒なものです。さらに登記についての必要性というのも一般的には知られていません。しかし、なるべく放置をせず、また、手続き忘れを発見したらなるべく早く対処することが大切です。

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相続手続きに関することなど、当事務所にてサポートいたします。登記の申請の代行も信頼のおける司法書士をご紹介することも可能です。懸念、不安、問題などは早い段階で専門家に相談し、解決しましょう。

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