日記20160329 遺産分割での相続人の心理

遺産分割が進まなくて不安な方へ

どなたかが亡くなると相続が発生します。相続を終えるには手続きが必要で、その手続きの中に遺産分割協議があります。遺産分割協議は遺産をどのように分けるかの話し合いですので、相続手続きの中ではメインイベントといけるでしょう。


しかし、相続手続きを進めたくても進められない場合があります。それは遺産分割協議が、つまり話し合いが進まないときです。なぜ進まないのか?様々な理由がありますが、やはり人的な要因が大きい場合が多いでしょう。


当事務所は相続手続きを多く手がけておりますので、遺産分割協議が進まないという場にもたくさん立ち合います。そこで、遺産分割協議が進まないときの相続人の心理というか、その理由を少し掘り下げてみました。

遺産分割が進まないとき、相続人の方々は大きな不安を感じます。そんなとき、進まない理由であったり、話し合いに消極的な相続人がどのように考えているかを相続できれば、その不安も和らぐのではないでしょうか。

 

※ご注意ください

当事務所では遺産分割協議を進めるためのお手伝いをさせていただいておりますので、様々な遺産分割を見てきました。その経験から相続人の心理を考察してみますが、あくまで当事務所での経験をもとにしていますので、すべての相続に当てはまるとは限らないことをご承知ください。

 

 

進まない理由@ <遺産分割の必要性を感じない>

他の相続人が遺産分割に対して無関心であり、必要性を感じていないということがあります。相続手続きは場合によっては放置をしても残された方にすぐには影響がない場合もあります。中には何十年も放置されていても影響がない場合もあります。そのため、遺産分割の必要性も感じない相続人もおり、その場合は遺産分割協議が進みません。

 

必要性を感じない」場合は更に二つのパターンに分けられますが、遺産分割協議の必要性や今後の影響を知らない場合と知っている場合があります。知らない場合は必要性をお伝えすれば進む場合があります。そのため、家族関係等にも注意をしなければならいこともありますが、しっかりお伝えすれば解決します。

 

もし遺産分割をしなければならないことを知っているのに必要性を感じてもらえない場合は少し厄介です。面倒くさいなどの単純な理由なら代替案が出やすいですが、そうでない場合は他の心理が隠されてる可能性も考えなくてはなりません。また、「面倒くさい」と言う理由であってもその裏側には別の心理が隠されているかもしれません。面倒ならこちらですべて代わりにやるよ、と声をかけても乗り気にはなってくれない場合、何らかの理由で遺産分割から逃げている可能性もあります。その場合に遺産分割を進めるには、その方がどの様な考えを持っているのかを慎重に探らなければなりません。

 

 

進まない理由A <より多くの遺産が欲しい>

これは相続の問題で相続人が揉める理由として良く言われるものです。こちらは相続というルールを誤解無く伝えることが必要ですが、この誤解だけで解決するとは限りません。たまたま現時点でお金が必要だったところに相続が発生すれば、その遺産を個人的な必要性に充てたいと思うことでしょう。

 

こちらはやはり相続人同士で落としどころを時間をかけて探ることが必要です。しかし、例えば「お兄さんだけ家を買うときにお金を援助してもらっているのではないか?」という生前贈与や特別受益に関しての不満があり、また、生前贈与や特別受益の有無や金額が不確かな場合は解決が遅れる、もしくはずっと平行線となってしまう危険性が高いと言えるでしょう。疑心暗鬼になってしまうことで不安が募り、解決の障害ととなります。このような時は生前贈与をしてもらった相続人はそれを認め、相続で清算する勇気が必要となるでしょう。

 

 

進まない理由B <他の相続人には遺産を渡したくない>

遺産分割が進まない理由として、より多くの遺産が欲しい、というものよりも「他の相続人にあげたくない」という理由の方が多いように思っています。「遺産がより多く欲しい」、と同じように思われますが、「あげたくない」というネガティブな理由はより複雑な家族間の思いがあるように思いますので、法律や財産などの具体的な誤解などを解いたとしても前に進むことはより困難であると思います。

 

この場合、過去から続く親族間の確執などがある場合が多く、遺産分割を進めるには当事者が割り切って考えるか、過去の確執から解決しなければなりません。しかし感情的になっている相続人同士では割り切って考えることは難しい場合が多々あります。

 

 

進まない理由C <自分だけが損をしていると思っている>

こちらも疑心暗鬼系です。他の兄弟が画策して自分だけ損をさせられるのではないかと考えると、話し合いにも応じてくれないこともあります。

この場合は財産目録を参照し、また財産目録の作成の方法、評価の仕方などを伝え、信頼を得ていく必要があります。しかし、全てが割り切れる財産であれば良いのですが、不動産など容易に分割することができない財産が占めている場合は注意が必要です。相続する財産に偏りがあると、その偏りに納得できない、または合理性がないと思われると、自分だけが損をしてしまっているとの理由で話し合いが進まない可能性があります。遺産分割で相続する額に偏りが出てしまうのは良くあることですし、それも必要な場合もあります。しかし、その相続する財産の額に偏りに不信感を抱く相続人だって多くいます。その場合は偏りについて説得するか、換価分割などで金銭的に平等を保つことを考えなければなりません。

 

 

進まない理由D <亡くなられた方のことを一番思っているのは私>

遺産分割というのは大抵が感情的になりやすいものです。どのような場合でも感情的になると思考停止してしまい、物事は進まないものです。「亡くなられた方のことを一番思っているのは私なのだから」という感情は、亡くなられた方を思う気持ちとしては良いのですが、他の相続人を排斥する感情を含んでいます。生前の家族の関係などが大きく関係するのですが、このような考えを持ってしまう相続人は他の方の意見を聞こうとしない傾向にあるように思います。

この場合、理由B他の相続人には遺産を渡したくない>と似ているのですが、相続と感情を割り切ることができれば良いのですが、なかなかそれは困難です。感情が勝ってしまうと話し合いは進めることが困難です。このような時はより理性的な話し合いが出来るようにより慎重な調整が必要だと思います。相続税などの問題が無ければ時間をおいてみるのも気持ちの整理につながるかもしれません。



進まない理由E <遺産分割から逃げている>

他の理由とも絡みあって存在する心理だと思いますが、遺産分割という話し合いに向き合えないでいる場合です。相続は人が亡くなることで始まりますので、それに向き合えないという場合もあるでしょう。しかし、やはり死には向き合っていかなければならず、宗教的な儀式を重ねることで徐々に向き合えるようになる方が多いものと思います。

 

遺産分割が長期に解決しない場合についていえば、「死」自体に向き合えないでいるということもあるのでしょう。しかし、この場合、その他の問題により遺産分割から逃げていることが考えられます。これも家族間の関係性から派生する問題ですが、相続という問題が解決してしまうと、実家との関係性も切れてしまうのではないかとの恐怖があるのではないかと思われる方がいらっしゃいました。その方は他の相続人とうまく関係が結べず、普段から交流がありませんでした。もし、実家の父母が亡くなり、相続という手続きが終わってしまうことで、実家との関係性が切れ、拠り所にしていた「実家」という帰属心も失ってしまうと考えているのではないでしょうか。これは私の考察ですが、当人との話を重ねるごとにそう思うようになりました。

 

「遺産分割から逃げている」というのは具体的な理由があっての逃避であればそれを解決すれば良いのですが、そうでない場合は相続人自身も気づかない不安や焦りがある可能性があります。この解決は困難ですし、他の相続人や、ましてや行政書士事務所が扱うものではありません。しかし、このように話を聞くうちに、理不尽だと思えた相続人が、なぜそのような振舞いをするのかの一端が見え、解決に一歩近づいたことになるのではと思います。

 

 

◇進まない理由F <自尊心を満たして欲しい(クレーマー体質)>

遺産分割を進めることが困難になってしまうケースに、相続人の一人が自身のプライド(自尊心)を満たされないために、それを満たすよう要求することで、他の相続人はなすすべがなく、手続きが進まないということがあります。


この場合「私のプライドを満たしてくれないと遺産分割には応じない」などと直接的な要求はまずありません。ただ、何度となくやり取りをすることで、きっとプライドを満たして欲しいと言うことなんだろう、と予測できるのです。このケースであろう状況は、遺産分割を進めようとしない相続人に以下のような行動が共通しています。

 

・自分では相続の手続きに関して手間や時間やお金をかけたくない。(他の相続人がやって当然という態度)

・他の相続人の調査結果や提案などは受け入れない。(信頼しないという態度)

・最もらしい理由をつけて拒否をするが、その理由がかなりハードルが高い、もしくは理不尽である。


このような場合、もし手続きを進めようとしている相続人が真面目で、律儀で、しっかり者である場合、話し合いをすることに対して精神的な負担で苦しくなってしまうことがあります。この場合、拒否をする相続人は基本的に他者を見下すような態度や威圧するような態度をとることが多いため、律儀な側の相続人としては参ってしまいます。


人を見下したり威圧する人というのは残念ながら未熟な人ですので、相手を振り回して優越感に浸ったり、他者をコントロールするとで悦に浸るということもあるでしょう。そのような方はクレーマー体質の方であると言えますので、話し合いのテーブルに乗せるには、財産的な満足に加え、その人の自尊心を満たす必要があると考えられます。

しかし、これはなかなか難しく、そもそも元から相続人の関係がギクシャクしている場合が多いため、律儀な相続人はうまく立ち回ることができません。言いなりになっていれば話は進むかもしれませんが、精神的に辛いこともありますし、また、言いなりになっただけで対等な話し合いをしたという気持ちにはなりません。


この場合、話し合いができないようでしたら調停や裁判なども視野に入れて話しをすることもひとつの方法です。いきなり調停を申し立てるのではなく、それを覚悟の上で話し合いに臨んでいることを伝えるのです。また、弁護士への相談を視野に入れているということでも良いでしょう。もちろんいきなり弁護士に相談する必要は無いのですが、その覚悟を持つことが大切です。これは相手より精神的に優位に立つことが必要で、それを裁判所などの判断を仰ぐ覚悟や、弁護士などの費用や面倒をいとわない覚悟で示すのです。

 

◇最後に

相続手続きは様々な手続きからなっており、財産調査などは相続人の一人でも行うことができるので、どなたでも進めることが可能です。しかし、遺産分割協議となると相続人全員で行わなければならず、場合によっては大変な作業です。

遺産分割協議は亡くなられた方とその家族の関係がすべて表に出てきます。今までは何となく目を伏せてこられた問題にも向かい合わなければなりません。遺産分割協議は財産のみの分配ではなく、家族間の問題の整理でもあるという意味合いがあることを頭の片隅に置いて取り扱わなければならないものだと思います。

 

 

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