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相続回復請求権
相続の欠格者や廃除された者、あるいは全く別の者が自ら相続人であると僭称(身分を越えた称号を勝手に名乗ること)して相続財産を占有している場合、それが善意からくるものであっても、本当の相続人に相続権を侵害していることになります。この侵害された相続権を取り戻すため、相続財産を侵害している者に対して返還の請求をする事を相続回復請求権と言います。
相続回復請求権の消滅時効
消滅時効とはその期間が経過したら権利が消滅してしまう事です。相続回復請求権は以下の消滅時効期間のいづれかが訪れたら消滅してしまいます。
◆相続人またはその法定代理人が相続権を侵害された事を知った時から5年
◆相続開始の時から20年
これは相続財産の侵害を知った場合は5年以内に回復請求しなければ、相続財産は戻ってきませんし(※)、侵害があった事を知らない場合は相続開始より20年で回復請求の権利を失ってしまいます。
※判例では侵害した者(A)がその財産が真の相続人(B)に属する事を知っていた場合、またはAに相続による持分があると信じる事ができるような合理的な事由が無い場合は上記の消滅時効の適用は無いと言っています。
相続回復請求権の方法
侵害された相続財産の返還請求は以下の方法によって行う事ができます。
◆裁判外での請求
◆調停の申立て
裁判外の請求では侵害している者に対して意思表示を行う事でできます。これは書面で行い、内容証明郵便などを利用するのが良いでしょう。また、請求やお互いの話し合いで解決しない場合は裁判所への調停を申し立てることができます。
遺留分侵害請求権とは
遺留分侵害請求権とは、遺留分を有する相続人の受けた相続が結果的に遺留分に達していない場合、遺留分を有する本人や、それを承継した人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、他の人が受けた遺贈や贈与の侵害を請求することができる権利です。
侵害請求できる対象は遺留分を侵害する「遺贈」と「贈与」です。そのため、被相続人が生前に行った贈与も遺留分侵害請求権の対象となります。
<ご注意ください>
令和元年7月1日に遺留分に関する法改正があり、それまでとは遺留分に関するルールが変わりました。例えばこのページでご案内する「遺留分侵害請求権」ですが、それまでは「遺留分減殺請求権」という名前でした。また、減殺請求という確固たる権利(物権的な権利)であったものが、侵害請求後の権利はと金銭的請求権(債権)となりますので、性質が大きくことなることとなりました。
→詳しくはこちら「相続・遺言のルール変更(民法改正)」
どうやって侵害請求するの?
遺留分侵害請求権は取り戻したい相手に対し、一方的に遺留分侵害請求の意思表示をすれば効力が発生します(このような性質の権利を「形成権」といいます。) 意思表示をされた相手は、本人の遺留分を保全する限度の財産権を返還しなければなりません。
侵害請求の対象となる財産権
遺留分を侵害された本人は誰に遺留分侵害請求権を行使すべきでしょうか?これは以下のような順序で行います。
1、原則
・まずは「遺贈」された財産を減殺。これで満たされなければ「贈与」を減殺します。
2、遺贈が複数されているとき
・遺贈者が特段の意思を示していなければ、それぞれから目的の価額に応じて侵害請求します。
・相続人に対する遺贈が対象であれば、受遺者の遺留分額を超えた部分が対象となります。
3、贈与が複数ある時
・この場合は後にされた贈与から侵害請求の額の算定を始め、順に古い贈与を算定していきます。遺留分が満たされた時に算定をやめます。もし同時に贈与がされていれば目的の価額に応じて算定します。
遺留分侵害請求の時効
・遺留分減殺請求は以下のどちらかの期間が経過すると消滅してしまします。
◆遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があった事を知った時から1年。
◆相続の開始から10年
・遺留分侵害請求後の時効
遺留分侵害請求権は金銭債権であるため、意思表示後の請求権は債権としての消滅時効にかかることとなります。
特別縁故者とは
特別縁故者とは被相続人が相続人無く天涯孤独で亡くなり、相続人も受遺者もいない場合に最終的に財産の分与がされる事となる人です。特別縁故者とは、以下の様な条件に当てはまる人を言います。
◆被相続人と生計を同じくしていた人
◆被相続人の療養看護に努めた人
◆その他、被相続人と特別の縁故があった人
特別縁故者として認められるには?
特別縁故者への財産の分与が認められるにはまず「相続人の不存在」が確定しなければありません。相続人が一人でも存在すれば特別縁故者への財産分与はなされません。裁判所にて相続人の不存在が確定したあと3カ月以内に特別縁故者の財産分与の申立てを行います。この申立が認められた場合に特別縁故者として財産分与がなされます。
事前の対策
もしご自身が亡くなられた後、特別縁故者に当たる人へ確実に財産を残そうとお考えの場合は遺言書の作成や死因贈与契約を結んでおく必要があります。特別縁故者の確定までは手続きが多く、また分与される財産も裁判所によって確定されます。遺言書や死因贈与契約を行っておけば手続きも楽になり、希望する財産を分与する事ができます。
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