日記20160111 付言事項の法的効力と気持ちの力

◆本文と付言事項の関係◆

遺言書を残される場合において、財産をどのように分けるのか? 誰に残すのか?、ということが大切な内容になってきます。もちろん、それ以外にも遺言書に残すことができることはたくさんありますが、ほとんどの方が当てはまることが自分の財産の分け方を決めておくことです。このことを決めておけば、遺言書に書いた内容は法的な効力を持たせることができます。

 それではこの他に法的な効力を持たせることができる内容は、例えば結婚をしていない異性との間の子供の「認知」や、子供がいらっしゃる方はその子供の「親権者の指定」、また、財産に関してでは「信託の設定」などがあります。これらの遺言は、当てはまる方は残すべきですし、当てはまらない方は無視をして良い無い内容です。

 このように遺言書の内容は、自身に当てはまることについて自身の意思に従い残すこととなるため、もちろん自由な意思により選択をすることができますが、目的に従い遺言書を残すと、自ずと記載する事項が決まってきます。

しかし、遺言書の中でも残しても残さなくても法的な効力には一切影響しないものがあります。遺言書に記載しても法的な効果が出ない事項はどうすれば良いのでしょうか。それは「付言事項」に記載することとなります。

◆付言事項の存在意義◆

 なぜ付言事項というものがあるというと、いろいろな理由がありますが、法的な効果を出したい部分と出したくない部分をごちゃまぜに記載してしまうと、その遺言書を読む側の人からすると、わかり辛いものとなってしまったり、解釈の仕方で争いが起こってしまう危険性を減らすため、法的効果を出したくないが出ない内容は付言事項という項目に記載することとなっていると考えるのがシンプルな理由でしょう。

そのため、付言事項は法的効果が出ない部分であるため、遺言書を残す場合、必ずしも付言事項を残す必要はありません。付言事項がなくても、本文の法的効果に問題はありませんので、残すかどうかは遺言書を残す人の自由です。この点は、本文は自分の意思を実現するために残すべき遺言は残さなければならないという拘束性があることと比べると、付言事項が完全に自由意志となります。

◆付言事項を残すべきか?◆

付言事項を残した方が良いかどうか?の問題ですが、自由意志で残すことができますので、どちらでも良いというのが結論です。

実際に私の同業者などでも意見はそれぞれで、本文が遺言をした方の意思の通りであり、また、争いを防ぐことのできるしっかりした文章であれば付言事項は不要だと仰る方もいますし、せっかく遺言書を残すのであれば付言事項の残すべきだと考えられている方もいらっしゃいます。

付言事項を残すかどうかは全くの自由であるため、専門家であってもそれぞれの意見がありますので、専門家のいったことを丸のみするのではなく、付言事項を残すかどうかはご自身で最終的に判断されるのが良いでしょう。

私としましては、遺言書を残す方の希望が第一ではありますが、もし迷われているのであれば残されることをお勧めしております。その理由は、遺言書の効力発生後のトラブル防止のためにも活用することができるという実利的な面もありますが、私が遺言書の作成をお手伝いする中で、付言事項の文章の作成が一番心に響く場面、感動すら覚えることがある場面であるためです。

◆付言事項の力◆

付言事項の部分の作成の際、私は以下のように行っております。

①遺言者ご自身が文章を考え、それを書面として作成されたものを、遺言書の原案にする。

②ご本人が文章を書くことが難しい場合(良い文書が浮かばない、手書きは負担が大きいなど)の場合、私がお話をお伺いし、文案を作成、それをご本人に見ていただき修正する、の繰り返しで遺言書の原案とする。

①の場合も②の場合も出来上がった付言事項の原案を読み返すと、なんとなく遺言者の人生を振り返っているような気になります。私は遺言される方とは特に面識はありません。遺言書を作成するためのお手伝いを依頼されてからのお付き合いになりますので、その方の今までの人生について全く存じ上げておりません。しかし、出来上がった付言事項の原案は、つい最近知り合ったばかりの私の心を打つようなものであることがたくさんあります。

おかしなことに、上記①の遺言者ご自身が書かれた文章であっても、上記②のように私が骨子を考えたものです、どちらも心を打つ内容になるのです。これは私の文章の作成の仕方が上手であるということを言いたいわけではなく、遺言書の作成という人生の中でも経験のないイベントにして、最終的な文章は遺言をされる方の思いが滲みでたものとなっているからではないでしょうか。

私はこのそれまで他人であった者の心をも動かす付言事項の力は偉大だと思っております。遺言書の存在を知らない相続人は、遺言をされた方が亡くなってから初めてこの文章を読むこととなります。それは大きな影響を与えるものと思います。

もちろん万人に良い感情を与えるわけではないかもしれません。亡くなられた方と残された方の生前における関係など、また、本文における財産分与への不満などがあれば付言事項などどうでも良いと思われるかもしれません。

しかし、それでも付言事項の力を無視してはいけないと思います。遺言書の作成を決意され方の思いは、たぶん法律なんかが及ばない部分での本当の力が宿るのだと私は思っています。

◆付言事項の書き方◆

最後に付言事項の書き方のポイントをお伝えします。まあ、付言事項は何を書いても良いので、こうしなければならないというものはありませんが、書きたいけれど内容に迷ってしまう場合は以下のような点を参考にしてみてください。

◇家族への感謝、自身の死後の家族への願い

もちろん感謝の気持ちが特にない場合は書かなくても構いません。もし感謝の持ちがあれば照れずにそのまま素直に残されることをお勧めいたします。

遺言書の本文の理由

財産を財産の分け方についての理由を付言事項に記載すると、受取る方も納得しやすいでしょう。どうしても財産の額などには差がついてしまいます。小さな不満でわだかまりが残ってしまうかもしれませんので、軽くでも遺言の理由をご自身で説明されると良いと思います。

悪口や批判は書かない

残された方が嫌な気持ちにさせてしまうことで、その後残された方々が良い方向に進むことは少ないでしょう。絶対これだけは言っておかなければならないというような事情があるのでなければ、あえてマイナスなことは避ける方が良いでしょう。

また、「遺留分減殺請求をしないで欲しい」旨を残される場合も、あまりしつこい内容にすると逆効果でしょう。もし本当にそれを望むのであれば、総合的に実現できるような対策が必要だと思います。

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