日記20150915 不仲な家族とのトラブル解決は…
相続、遺言などの手続きのお手伝いをさせていただいておりますので、家族が不仲であったり、何らかの問題を抱えていることにお悩みの方からのご相談やご依頼もたくさんございます。そのような方々、特にご相談やご依頼を直接いただいた方などは「我が家の問題は特別であり、他人には話せないような大問題である」と深く悩まれている方が大勢いらっしゃいます。
しかし!家族間の問題とは特に珍しいものではありません。「こんな問題、ほかの家庭にはありませんよね?」とよく問われるのですが、そんなことありません。似たような悩みをお持ちの方はたくさんいらっしゃいます。
家族間でのトラブルは他人に知られることは避けたいと思われがちですし、また、それゆえに我が家の問題が一般的に起こり得るものなのか、それともこんな事でトラブルになってしまって恥ずかしいものなのかの判断がつき辛く、より内に籠って悩み続けてしまいます。そんな方の一助になればと家族間トラブルに関しての傾向や内容などを書いてみたいと思います。
繰り返しになりますが家族の間のトラブルや不仲は恥ずかしいものではありません。隠し通すべきものでもありません。問題はどこの家庭にも大なり小なりあるものですし、内容も家族ごとに様々です。そう思ってまずは気持ちを楽にしてみてください。
◆家族間のお悩みの傾向
私が扱う業務で家族間のお悩みが問題となるのは実際に「相続が始まったとき」と「遺言書を書くとき」です。他にも離婚協議書の作成や相談も家族間のお悩みと言えますが、こちらは夫婦間ということでまた別の機会にお話ししようと思います。
相続が始まったときと遺言書を書く時ではまた悩みの性質が違います。遺言書の時は親子間の不仲であったりと親子関係にトラブルがあるときが多いです。それはやはり親の立場にある人が遺言書を残したいと思われるためでしょう。
遺言書は原則として遺言者がお一人で作成できますし、家族の助けがある場合でも遺言者と意見の合う方と話しが進められるため、家族のお悩みがトラブルとし表に出てくることはありません。遺言書の作成の場面では「遺留分をどうするか?」がもっぱらの問題です。
しかし、相続が始まったときの家族間の悩みは相続人のトラブルとして表に出てきます。それは実際に遺産を分けるという作業は相続人の全員で行う必要があるためです。トラブルの相手は親子間や兄弟間の双方がありますが、割と多いのが兄弟姉妹間での不仲です。
兄弟姉妹はずっと親元で暮らす訳ではなく、結婚や就職を機に、多くの場合が離れていきます。すると兄弟姉妹はある時期からそれぞれの人生を歩むことになり、それにより人生観であったり生活自体が大きく異なるからであるのかなと思います。
もちろん親子間での不仲もあります。親子間の不仲は遺言書を書くという場面で多いのですが、遺言書の作成は一人でできますので、不仲な子供と話したりする必要はありません。そのため親子での不仲であることは一方からの話しを聞くにとどまることが多く、また遺言書に関しては財産上の分割を考慮すれば出来上がりますので、身に染みて家族間の不仲を感じることはありません。
◆相続はトラブルのきっかけにしか過ぎない?
家族の不仲や問題がトラブルとして表に出てくるのは先にもご紹介しましたように相続の手続きの場合が多いです。それではそのトラブルの原因は何でしょう。
いろいろな相続を見ていますと、完全に相続、つまり遺産をどのように分けるか、が本質的な原因であることは少ないと思います。そもそも家族間での不仲や問題が、相続という場面をきっかけに表に出てくるという場合が多いと思います。
例えば遺産分割まではとても仲が良かった家族がいたとしまして、いざお金の分割の方法を話し合ってみたら自分の取分が思っていたより少なくなり、その額が不満でトラブルになってしまったというケースはそう多くありません。
大きな資産を持った方が亡くなられた場合であれば遺産の分け方が不満であることのみが原因にないりうるのかもしれませんが、一般的な家庭では分割の方法のみが不仲やトラブルの原因となるというよりは、もともとあった何らかの問題が相続手続き上でどうしてもトラブルとして噴出してしまうイメージを持っています。
◆トラブルの内容
トラブルの内容は大きく分けて以下の二つだと思います。
①遺産の分割方法に納得がいかない
②相続人の一方が協力的でなく、手続きが進まない
①の理由としては遺産の「額」に納得できないという場合は「これだけの額が欲しい」という積極的な理由もあれば、「相手には1円も渡したくない」という消極的な理由もあります。
積極的な理由でのトラブルの原因としては、「積極的な理由からは被相続人の生前より遺産をあてにしていた」、「相続の時期にちょうどお金が必要な時期だった」、「法的な権利だから私がいくらもらうのは当然」、というようなことがあげられます。
これに対して消極的な理由では「昔から嫌いだった」、「私ばかり親の面倒を見てきて不公平である」、「あいつは話をしても分からない奴だから」など、その理由もネガティブなものが多くあります。
また、理由が良くわからない場合もありますが、いろいろな状況から察するに「私に断りもなく勝手に今まで手続きを進めることが許せない」、「私の満足できる状況を用意しなけれな判子を押さない」、など、他の相続人に対して自身の自己顕示欲を満足させることを暗示的に条件にされるような場合があり、この場合はその方を満足させるために他の相続人が大変骨の折れる努力をなさいます。
②の理由としては相続手続きについて法律をよくご存じでないため疑心暗鬼になられていたり、お互いの誤解に基づくものがあります。この場合は少しずつ誤解を解いていけば話し合いは進みますし、このような理由でしたらトラブルとか問題の範疇に入らないと思います。(この問題の解決は当事務所が得意とするところです、と少し宣伝しておきます(笑))
難しいのは①場合にも少しご案内した「自己顕示欲を満足させることを暗示的に条件にされるような場合」です。このようなケースは意外に多いと思います。これは相手方の気持ちの持ちようなのでその部分を満足させなくてはなりません。しかし、気持ちを満足させることほど難しいことはなく、相続手続きが長引くケースです。
この場合、条件を課された方(一生懸命に手続きを進められている方)は具体的な目的すらわからないまま言われた通りに努力を続けなければならないため、手続き自体や相手のことに嫌気がさしてしまいます。
◆問題の本質
積極的な理由での問題はドライな場合が多く、金銭的な話し合いで解決する場合も多くあります。しかし、消極的な理由での問題の本質は根が深く、正直言いますと解決は困難です。
とりあえす遺産分割の手続きだけを解決する方向で進めることは選択肢のひとつですが、それでも家族の問題の解決にはなりません。
相続手続きの際にこう仰られる方が多くいらっしゃいます。「手続きが終わったら家族の縁を切りたい」と。中には遺産はいらないから家族の縁を切る、と希望される方もいらっしゃいますが、家族と縁を切るということは法律上ではできません。そのため法律上のルールである遺産分割だけは取り合えず頑張って終わらせてはいかがでしょうか、とご提案いたします。
家族と縁を切りたいと思われる方は相続等がきっかけでなく、以前より何らかの不満や問題を抱えていらした方です。本来は関わり合いたくないと思われていたのに、相続をきっかけに話し合いなどをしなければならなくなり、ただでさえ親族が亡くなられて動揺している時期に、相続手続きをしなければならず、一層不仲な親族を恨むこととなってしまいます。
この原因は本当に根が深く、私としても根本的な解決にお役に立ちたいと悩んだ時期もありましたが、現在では遺産分割というステップをクリアすることでひとつの安心を得て頂けると割り切って、家族の問題の解決には一歩引いた立場でお手伝いをさせていただいております。
◆最後に
家族の問題は本質的に解決が困難です。ドロドロとした怨念のようなものすら感じることもあります。しかし、そのような問題を抱える家族は意外に多いものです。「自信を持ってください」、というのは語弊があるかもしれませんが、少なくとも「うちだけの恥ずかしい問題」と決めつけず、少しでも前向きに考えてみてください。少なくとも相続の問題であれば解決の余地は十分ありますよ。
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