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相続を行う過程の中で遺産分割協議というものがあります。遺産分割協議とは「亡くなられた方の財産(遺産)」を「相続人の間で分けあう(分割)」ための「話し合い(協議)」です。相続人が複数いる場合は何らかの形で協議が必要となってきますし、場合によっては「遺産分割協議書」の作成が必須となります。
葬儀が終わり、落ち着く間もなく始まる相続の手続き。「相続でのもめ事」はいろいろな形で良く耳にするものです。テレビドラマや小説での題材となる事もしばしばですし、もしかすると知り合いや親族でも相続に関して揉めた、トラブルがあったという事も耳にした方がいらっしゃるかも知れません。
それは相続が亡くなられた方への「思い」の整理である一面があるからではないかと思います。
本来、思いは残された方それぞれの心の中の問題ですので、それぞれが故人を偲ぶことで様々は解決を迎えるものではないかと思います。
しかし、「相続」となるとその気持ちの整理に重ねて、具体的な財産の整理が伴います。本来、それぞれに時間をかけて気持ちの整理をする事になる思いを、まだ亡くなって間もない時に財産という具体的な形として整理をしていかなければならない作業は、思いを具体的な量に推し量られているものと錯覚し、気持ちの均衡を失わせ、不必要な家族間のトラブルを生んでしまうのではないでしょうか。
亡くなられた方の事を思えば笑顔で相続を行う事ができれば何よりではないかと思います。相続にはいろいろな過程がありますが、ここでは「遺産分割協議」に注目して見たいと思います。
遺産分割の調停
以下のグラフをご覧ください。日本の死亡者数と裁判所に申立てられた遺産分割調停の数の推移です。
調停数:裁判所 司法統計「第2表 家事審判・調停事件の事件別新受件数より
死亡者数:厚生労働省 平成22年度(2010)人口動態統計の年間推移より
「遺産分割の調停」とは相続人間の遺産分割に関する話し合いで協議が整わない場合に、裁判所に申立てを行う事により、紛争当事者の間に裁判所の調停員が介入して紛争を解決を図るものです。
上記のグラフより、死亡者数の増加に伴い調停の申立数も増加しております。この二つの統計だけでは断言はできませんが、日本の相続のうち、一定数は当事者間の話し合いでは解決が困難であるという現状があるようです。
もちろん、いろいろな事情もあるかと思いますので調停の申立てが即ちトラブルと短絡的に判断する事もできませんが、当事者間での話し合いで解決が困難な遺産分割があることがわかります。
大切なものは
以上のように、当事者間では解決が困難な相続がある中で、どのようにすれば笑顔で相続を成し遂げる事ができるかを考えてみました。
相続に関する情報
普段の生活の中で相続の事など興味を持って生活されている方は数少ないかと思います。そこでいざ始まった相続について、知らない事があれば不安であるかも知れませんし、また後になって後悔する事もあるかもしれません。
まず大切なものは相続に関する情報を仕入れ、見通しを持つ事が必要ではないかと思います。
コミュニケーション
◆情報の共有
相続に関する情報は誰が持っていれば相続はうまくいくでしょう。これは関係者全員が同じ情報を共有する事が必要であると思います。これは相続人でない方も相続の情報は共有していただきたいと思います。それぞれの認識の違いが将来思わぬいざこざの原因にもなりかねません。
◆遺産分割協議
遺産分割協議は相続人の間の話し合いによって行われます。この話し合いは協議の間だけではなく、普段からの情報の共有や意思の疎通の延長線上にあるものと当事務所では考えております。相続の全体を通してのコミュニケーションが笑顔の相続を作り上げるものと思います。
遺産分割協議で考慮すべき事、知っておくべき事
遺産分割協議において考慮すべき事や知っておくべき事はたくさんありますが、以下にいくつかをご紹介します。
遺産の分割方法
遺産がすべて現金であれば遺産分割はそれほど難しくはないでしょう。現金は容易に分割できるため、相続分の割合で現金を分ければよいのです。しかし、不動産であった場合はどのように分割するのでしょう?以下に遺産分割の方法をご案内します。
①現物分割
これは遺産の分割をそのままの状態で分割する方法で、一番原則的な分割方法です。もし遺産が現金のみでしたら、相続分に従いその割合で分割します。もし遺産が現金と土地であるならば、相続人Aには現金を、相続人Bには土地を、と分けます。
②代償分割
これはある相続人が相続分を超える遺産を取得した場合、その他の相続分に満たない遺産した取得していない相続人に対して債務を負う分割方法です。例えば遺産は土地しかない場合、相続人Aが土地のすべてを取得し、相続人Aから相続人Bの相続分に満たない分の代償金を支払うよう場合です。
③換価分割
これは容易に分割できない遺産を売却する事により換価し、遺産を分割する方法です。
生前、被相続人に特別の貢献
共同相続人中に被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者については、相続における実質的公平を図るため、相当額の財産を取得させる寄与分という制度があります。この寄与分については遺産分割協議にて寄与分を認めるか?どれくらいの額なのか?を決定します。もし寄与分を認める場合は「寄与分を定める協議書」を作成して、権利義務関係を明確にします。もし、協議が後あらない場合は家庭裁判所への調停を申立ます。
亡くなられた時に残った財産以外の財産
相続財産は被相続人が亡くなられた時に残っていた財産のみが対象ではありません。生前に財産を贈与(特別受益)していた場合はその贈与も相続財産の対象となります。もし、この特別受益を考慮して相続時には遺産を相続しないとした場合は「相続分無き事の証明書」を作成して、権利義務関係を明確にします。
遺産分割のための話合い(遺産分割協議)
遺産分割協議は相続人が集まって、相続財産をどのように分けるかの話し合いを行うものです。遺産分割協議で決定したことがそのまま各相続人の引き継ぐ財産となりますので、遺産分割協議は相続におけるメインイベントとなるものです。
遺産の分割を話し合う
相続には「法定相続分」というものがあって、特に何もしなければ相続財産は法定相続分によりわけられます。しかし、必ず法定相続分どおりに分ける必要はありません。遺産分割協議は相続人がどの位の財産を分与されるかを相続人の間で話し合って決めるものです。
遺産分割協議は全員で
この遺産分割協議は相続人全員で共同して行わなければなりません。協議に誰かが欠席しているのに終わらせてしまう事もできませんし、ある相続人が他の相続人を忖度して決めてしまう事もできません。「全員で協議する」と言う事は法定事項でもあり、また今後のトラブルを避けるための最も重要な点であるのです。
ただし、遺産分割の内容について全員が把握した上で意義が無ければ、遺産分割協議書に持ち回りで署名捺印する事は可能です。しかし、後のトラブルを防ぐためにも出来るだけ全員で一時に顔を合わせる事が重要です。
やり直しができません
遺産分割協議で決まった財産の分割方法は今後それぞれの相続人を拘束します。そして原則的に遺産分割協議は一度協議が整ったら取り消しなどを行えませんので、終わった後に「やっぱり納得できないなぁ」と思ってもやり直す事ができません。そのため協議が整うまで相続人の間で納得できるまで話し合いをする必要があります。
※相続人の全員が同意した場合はやり直すことが可能です。しかし、やり直しの期待をして安易に判子を押してしまうと、あとから同意が得られず、結局やり直しができないという事態は避けなければなりません。
遺言書がある場合
もし、亡くなられた方が遺言書を残していた場合は遺産分割協議は必要ありません。しかしその場合でも相続人の全員が集まり、遺言書の内容を確認し、納得する事は大切であると思います。
また、相続人全員が納得するのであれば遺言書がある場合でも遺産分割協議を開き、遺言書と異なる財産分与を行うこともできます。しかし、協議が整わなければ遺言書に従った分与を行う事となります。
遺産分割協議書
遺産分割協議書とは、遺産分割の話し合いの結果、誰がどれだけの財産を分与されるかなどの協議の結果を書面にまとめたものです。
遺産分割協議書の効果は以下のようなものです。
もし、しっかりと遺産分割協議を行ったにも関わらず遺産分割協議書を疎かにしていまった場合、後日気持ちが翻意した相続人の一人より「あの協議は無効だからやり直しだ!だって協議の証拠がないじゃないか!」などと言われる危険性があります。どんなに円満に遺産分割協議が終了しても遺産分割協議書の作成に手を抜く事は厳禁です。
作業は慎重に
遺産分割協議書は相続人の間での話合いの集大成です。これは先にお話ししていたように、相続開始から関係者の間でコミュニケーションを取られてきた方には、相続開始からのひとつ大きな区切りとなるものです。
そのため遺産分割協議書は誰にでも主張出来るようなしっかりとした書面を作成する必要がありますので、「まあ、決まった事をメモ程度に書いとけがいいや」とか「まあ、話しはついたから畏まった書面なんてめんどくさい」なんて思わずに、しっかりとした書面を残していただきたいと思います。
また、話し合いが上手くまとまらない、先に進まない、と言うような場合は当事務所にてご相談や書類作成代行、遺産分割協議のサポートを行っております。
コミュニケーションを取る事、書類を不備無く作成する事、または必要に応じて専門家のサポートを得る事などが納得できる「笑顔の相続」を行うための要件であるものと確信しております。
相続全体についてのサポート内容を詳しく知りたい方はこちらへどうぞ。
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