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相続人の一人にすべての財産を相続させたいというとき、遺言書を残すことが考えられます。しかし、遺言書にて特定の誰かに「すべての財産を相続させる」には大きなハードルが存在します。それは遺留分です。遺留分とはどのようなもので、どのように対策を立てればよいのでしょう。こちらでは遺留分の意味と対策をご案内いたします。
「すべてを相続させたい」は叶わない?
「相続人のひとり(または特定のひとり)に自分のすべての財産を相続させたい」と希望される方は大勢いらっしゃいます。これはすべてを相続させることについてのお問合せの割合が多いことからも感じています。
すべてを相続させたいという希望は少なくとも遺言書を作成しなければ叶いません。しかし、遺言書を残したところで必ず希望通りとなるわけではありません。理由は遺言書が残されていた相続には「遺留分」という考え方が法律で決められているからです。
遺留分とはなにか
遺言書のない相続は法定相続人が法定相続分に従い相続することが原則です。しかし、遺言書が残された相続ではその遺言書の残された通りの相続がされることとなります。つまり、遺言者は自身の財産をどのように相続させるかを決めることができるのです。
しかし、遺言者が特定の誰かひとりにすべての財産を相続させるという遺言書を残した場合、他の相続人は遺産を貰うことができません。遺言書は誰にも相談せずひとりでこっそりと作成することができます。そうなると相続人は、法律上は法定相続分に従っていくらかの遺産を貰えると期待や予想をしていたにも関わらず遺言書によってそれが断たれてしまうこととなります。
これではいくら遺言者の意思であったとしても遺産を貰えない相続人にとっては納得できないと言う人も出てくるでしょう。そこで遺留分と言うルールを作り、遺言書によって遺産を貰うことができない相続人も最低限の額(遺留分)の請求をすることができることとされています。この請求できる権利を「遺留分減殺請求権」と言います。
遺留分はどの位が認められているのでしょうか。遺留分は相続人の法定相続分の2分の1となります。兄弟が相続人の場合は遺留分権はありません。(詳しくはこちら)
遺留分減殺請求権は必ず行使されるのか?
この遺留分減殺請求権は必ず行使されるものではありません。遺産を貰えない相続人が権利を行使すると意思を示した時に効力が発生します。 そのためどんなに不満に思っていても権利の行使の意思を示さなければ請求はされず、遺言書通りにひとりにすべての財産を相続させることができます。しかし逆に言うと遺留分減殺請求の意思さえ示せば効力が発生しますので、遺産を貰えなかった相続人の気持ち次第で行方が変わってくるのです。
なお、遺留分は相続が発生したことを知り、かつ減殺すべき相続があったことを知った時から1年、または相続の発生から10年で時効となり消滅します。
すべてを相続させたい理由の例
遺言者は特定のひとりにすべての財産をを相続させたい理由は様々です。その例をご紹介いたします。
主な遺産が不動産しかない
不動産はなるべく単独で所有した方が管理がしやすいものです。不動産以外にも遺産があれば不動産とその他の財産と分ければよいのですが、主な財産が不動産のみであれば、管理のしやすさからひとりに相続させたいと希望されることが多いようです。
これは管理のしやすさのみでなく、自宅のない相続人に対し住まいの確保という意味であったりもすることでしょう。
生前お世話になったお礼
二人の子供のうち、片方は遠方に自宅を構えたが、片方の子供は同居してくれて看護などを尽くしてくれた、などの場合も生前のお礼としてすべてを相続させたいと希望される方が大勢いらっしゃいます。
親不幸者には相続させたくない
逆にこちらは親不幸な子供には相続させたくない、と考えられる方です。遺言書には「相続人の廃除」という相続権自体を奪うルールがあるのですが、この廃除は裁判所から認められることは困難です。そのため、遺言書において遺産をあげないよう残される場合がございます。
他者の影響によるもの
周りの人達の影響によって都合の良い遺言書を作成する場合もあります。本来は遺言書は自身の意思で作成するものですので、他者の意見に従って作成することは望ましくありません。もしかすると本心ではない遺言書かもしれません。しかし、人は他者の影響を受けずに生きて行くことは困難ですので、他者の影響を全く受けていない遺言書というのもあり得ないことかも知れません。
非常に難しいところですが、遺言書は書き直しがいくらでもできます。他人からどのような影響を受けていようと、現時点での本人の意思であるならばすべてを相続させる遺言も当然に有効だと思います。
遺留分権を奪うことはできるか?
すべての財産をひとりに相続させる場合、必ずと言っていいほど遺留分が問題になってきます。しかし、いくら遺言者でも相続人の権利である遺留分を奪い取ることはできません。「遺留分の放棄」というルールもあるのですが、これも遺留分権利者の意思次第なので、結局は他人が遺留分についてどうこうできるものではないのです。
そのため、すべての財産をひとりに相続させる遺言書を作成する場合、この遺留分についてどのように対策を立てるかが一番の考えどころとなるのです。
遺留分に関する対策
以下に遺言書を作成するときに遺留分に関する対策をご案内致しますが、どんなに対策を練っても結局は遺留分権者の意思に従うこととなります。この点は変わりませんのでご留意ください。
付言事項(メッセージ)を残す 【法的効力なし】
「付言事項」とは遺言書の中でも法的な効力が発生しない部分のことです。例えば遺言者は「残った家族は仲良く幸せに暮らしてください。」と思っている場合、そのメッセージを付言事項として遺言書内に残すことができます。
すべてを相続させる遺言書ではこの付言事項を遺留分減殺請求をしないで欲しい旨をメッセージとして残すために利用します。メッセージですので法的な効力は無く、結局は遺留分権利者の判断に委ねられますが、亡くなった人からの最後のメッセージとして心情的な部分で考慮される可能性を狙ったものです。
なお、直接的に「遺留分減殺請求をしないで欲しい」でも良いのですが、なぜひとりにすべてを相続させるかの理由とその気持ちを伝えることの方が重要であり、効果もあるように思います。例えば「次男は仕事や私生活を犠牲にして私の介護を優先してくれたことにとても感謝しています。そのため、次男の余生を考えると私の不動産を住まいとし、預貯金で少しでも楽な生活をして欲しいと願い、遺産をすべて相続させたいとこの遺言書を残しました」などです。いかがでしょうか?しっかりとした理由と願いが記載されていれば遺留分権利者の理解も得られるかもしれません。
遺留分減殺をする財産の指定をする 【法的効力あり】
もし遺留分減殺請求をするならばどの財産からするべきか、を指定することができます。例えば不動産と預貯金を相続させる場合、遺留分権利者が遺留分として不動産を譲って欲しいと主張されたらいかがでしょう。終の住処として不動産を相続させたのに、それが遺留分として奪われる危険性があるとせっかくの遺言書も不安なものになってしまします。
このような時はどの財産から遺留分を減殺するかの指定をすることができます。(民法1034条ただし書き) これにより相続させたい財産にある程度の優先順位をつけることが可能です。
※遺留分減殺は遺贈→後にされた贈与→先にされた贈与の順で減殺されますが、この順序は上記の指定で変更できません。
生前贈与や特別受益を理由とする 【法的効力なし】
遺留分の対象となる財産には生前の贈与も含まれますが、生前に与えた結婚費用や住宅購入費用等の贈与を理由に遺留分減殺を行わないよう希望します。例えば「長男には生前に事業資金と住宅資金を与えているため、死後の財産は二男にあげたいと思うので、遺留分請求はしないことを願います」などです。ただし」、この願いも付言事項に属し法的効果はありませんので注意が必要です。
残された相続人に判断を委ねる
遺留分は残された相続人に任せ、自分は一切言及しないというやり方です。遺留分については結局は残された人の意思次第なのですが、生前に遺留分の心配をして気を病むよりは割り切ってしまうのもひとつの方法です。
これは付言事項等にも一切遺留分に関しては言及しないとか、そもそも付言事項を残さないななどで行うことができるでしょうし、相続人に任せる旨をメッセージとして残しても良いでしょう。
生前に相続人全員で協議する
遺言書の作成の際に相続人の全員にその旨や内容を通知したり、全員で話合いをしたりすることは多くは行われてはいません。 遺言書は遺言者が単独で作成できるため誰にも相談をする必要はありませんし、お年寄りの方などは同居の相続人とは一緒に作成を進めることはあっても、同居していない相続人には特に連絡等は取らないことが多いと思います。
しかし、あえて遺言書を作成する前にその旨と内容を相続人に伝えることでトラブルを防ぎます。 もちろん反発も予想されますが、しかし遺言者の意思を事前に伝え、思いを分って貰うことは大きな効果があるように思います。
なお、もし遺留分権利者が納得してくれれば「遺留分権の放棄」という手続きを取ることが可能です。実際には遺留分を放棄をするだけの生前贈与があったことを家庭裁判所に申出るなどがなければ認められるとは限りませんが、生前に相続人の納得が得られた遺言書が一番幸せな相続となるのではないかと考えております。
遺留分と遺言書
すべての財産をひとりに相続させるためには遺留分の問題を解決しなければなりません。しかし、遺留分の問題は遺言者自身には解決できません。最終的には相続人の意思が介入します。現在、雑誌や書籍やホームページなどで遺言書を残せば万事解決、とあおる様な意見も多くみられますが、遺言書を残すことがすべての解決になるわけではありません。残すことがより良いのであれば残す、良くならないのであれば残さない、との判断もしなければなりません。遺留分は「遺言書は相続に対して万能ではない」ことに対してのひとつの象徴のように感じます。結局は親族のコミュニケーションが取れており、信頼関係が形成されていれば相続でトラブルは起きにくいのです。
しかし、そのような家庭はそんなに多く無いように思います。相続の相談の際に「うちの家族は特殊で、あまり仲が良くないんです」と前置きされる方がいらっしゃいますが、実はかなり多くの相談者が同じような前置きをされます。(そのようなお悩みがある方だからこそご相談にいらっしゃるのであるとも言えますが。)
そうであればやはり可能な限りで望みを叶えたいと当事務所では考えております。遺留分に関してもできる限りトラブルを緩和させるようなものを作成できるようお手伝いさせて頂きたいと考えております。遺言は難しい問題ではありますが、共により良い遺言書を作成していきましょう。
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