LGBTの法律〜亡くなる前に財産移転を準備する〜

日本においてLGBT同士の結婚は平成27年の現時点で認められていません。法律を改正すれば認められるのか、もしくは憲法を改正しなければならないのか、その議論はまだまだ本格的には始まっていない状況のように思います。


なお、現時点での議論では憲法24条には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し…」とあります。両性とは男女のみを表すのか、それども同性をも含むのかの解釈が争点となっているようですが、第十三条で「すべて国民は、個人として尊重される…立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」や第十四条の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」などの条文などを考えると憲法を改正することなく同性婚を認めても良いようにも思います。


さて、話が少し逸れてしまいましたが、LGBTが夫婦らしく生きるためには、現時点で婚姻が認められていない以上、自分たちの力で、現在ある制度を利用し、夫婦と同様の権利を作っていかなければなりません。こちらではLGBTが夫婦として長く寄り添う場合の相続等の財産移転についてのご紹介をいたします。

相続について知る(法定相続)

相続とは人が亡くなった場合、その人が持っていた財産や権利などを相続人に包括的に移転するものです。100万円の預金とマンションを所有していた人が亡くなった場合、それらの財産は相続人が、相続分に従い受け取ることとなります。

さて、相続人と相続分とはどの様なものでしょう。ご存知ない方はこちらのページをご覧ください(相続人について)(相続分について) 相続人と相続分は法律でしっかり決められており、原則として相続はこれに従います。

LGBTについて注目すべき点は、法律上の結婚をした配偶者は相続人となり、また配偶者は相続分も一番多いということです。しかし、ここでの配偶者とは「法律上の結婚をした夫婦」における配偶者であり、LGBTの同性カップルではパートナーに自分の遺産を相続させることはできないのです。もし同性カップルの一人が亡くなった場合、パートナーではなく、法律に定められた相続人である親族がすべて相続することとなります。

これはLGBTに限らず事実婚、事実上の夫婦とみなされる異性のカップルも相続は認められません。あくまで法律上の結婚をした夫婦に限ります。

 LGBTのカップルで相続させるには

それでは末永く夫婦として暮らしていくことを望む同性カップルが、もし自分が死んだときにパートナーに遺産を残すためにはどうしたら良いのでしょう。自分たちで対策をるための方法を以下にいくつかをご紹介します。

遺言書を作成しておく

先にご紹介した相続は法定相続といいまして、すべての亡くなった人に当てはまるルールです。しかし、任意に相続をさせたい、相続人以外にも遺産を分けたい、相続人には遺産をあげたくないと考える方のために法律では「遺言書」を認めています。遺言書を残すことで、相続人以外の人にも遺産を残すことが可能となります。つまり同性カップルのパートナーにも遺言書を残すことで自分の遺産を残すことができますし、パートナーに遺言書を残してもらえば自身が遺産を受け取ることが可能です。

これにより同性カップルは法律上の夫婦と認められないことによる相続の問題を解消することが可能です。遺言書は法律で定められた文書ですのでそれなりのルールがありますのでそれに従わなければ無効となってしまいますが、財産を相続させるにはかなり自由に行うことが可能ですので、利用価値は高いと考えられます。

なお、注意点としては、お互いに遺言書を作成する場合でも、一つの遺言書に二人が遺言してしまうと無効となってしまいます。遺言書はお互い別々に作成しなければなりません。

遺言書の活用についてはこちら

 死因贈与契約を結んでおく

少し聞きなれない契約ですが、これも相続に関する代替として利用することができる契約です。内容は遺言書とほぼ同じと考えていただければよいと思いますので、遺言書で事足りる、特別なことは遺言しない、と思われる方は遺言書の方が使い勝手が良くおすすめです。

それでは死因贈与契約とはどんな特徴があるのでしょう。遺言書は一人で勝手に作成できます。パートナーに相談することなく、独断で秘密裏に作成しておいても、自分が亡くなったときには効力が発生します。しかし死因贈与契約は「私が亡くなったあとの財産はあなたにあげます」とパートナーとの間で契約をしておくのです。つまりパートナーとの合意があって初めて有効となります。しかし、これだけでは遺言書の方が一人で作成できるし、一般的だし、死因贈与契約はメリットを感じることができません。

死因贈与契約のメリットはパートナーと契約をするときに、負担をつけることができるのです。例えば、「身体が悪くなった私の介護をしてくれたら遺産をあげます」のように、生前の介護の条件として遺産をあげる契約をすることが可能です。また、死因贈与契約であれば不動産に関する死因贈与の仮登記をすることができるのでどうしてもパートナーに不動産をあげたいという方は利用する価値があるでしょう。

しかし、これらは専門的ですので、まずは遺言書を考え、それでも足りないときは死因贈与契約を検討するという順番が良いと思います。

負担付死因贈与契約の活用についてはこちら


 養子縁組をしておく

養子縁組は届出をすれば、他人を自分の子供とすることができるものです。養子縁組は法律に従い届けを出すものであり、法律上も親子と認められるため、その親子間では法定相続をすることが可能となります。パートナーを配偶者ではなく養子にすることには抵抗があるのは当然です。しかし、相続や法的権利については親族と認められるため、状況に応じて割り切って養子縁組を行うこともひとつの方法かと思います。

なお、注意点は年下の人が年上の人を養子にすることができません。必ず年上が養親、年下が養子となります。


ところで、同性カップルで子供が欲しいと考えたとき、この養子縁組がとても重要な制度となります。同性カップルが自分たちの子供を作るというのは簡単な問題ではありません。女性同士のカップルであれば精子バンクなどを利用することも可能ですが、男性同士のカップルの場合もっと複雑ですね。同性カップルでは子供が生まれた時点でカップルの両者がそのまま両親となることはなく、法律上の親子となるには養子縁組が必要です。相続という観点からも子供を養子にすれば、その子供には遺産を相続することが可能となります。ひとりの子供に対して複数の養子縁組をすることが可能ですので、カップルがそれぞれ同じ子供を養子にすることが可能です。

 財産移転での注意点

上記に相続に関連する方法で遺産を相続させる方法をご案内いたしましたが、生きているうちに財産をあげてしまえば良いではないかと考えられ方もいらっしゃるでしょう。その場合は贈与税を考えなければなりません。贈与税は非常に高く、1000万円の贈与を一度にすると数百万の贈与税がかかります。しかし、相続として財産が移転された場合は相続税の対象となりますので、1000万円の相続では税金はかかりません。生前贈与をしてはいけないという訳ではありませんが、税金等も考慮にいれて対策が必要です。

相続税がかかるか知りたい方はこちら

 生きている間の準備

こちらのページでは亡くなったあとの財産についてのご案内でしたが、同性パートナーを配偶者として生きていくための生前の権利義務のための準備も必要な場合があります。それは任意後見契約であったり、準婚姻契約であったり、また今話題の渋谷区発行のパートナー証明書であったりします。これらも夫婦としての関係を補完させるために利用の検討をされることがおすすめです。

詳しくはこちら LGBTの法律〜今後の準備(任意後見など)〜

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遺言書や死因贈与契約の作成、その他のご相談などを承っております。遺言書は知らずに利用しないことと、知った上で利用するかしないかを判断をすることは大きな違いがあります。もし少しでも気になりましたらお気軽にご相談ください。

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※LGBTとは

LGBTとは女性同性愛者(レズビアン)、男性同性愛者(ゲイ)、両性愛者(バイセクシュアル)、そして性同一性障害含む性別越境者など(トランスジェンダー)の頭文字をとった略語です。

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