「自身がいずれ亡くなる時のために」「相続のトラブルを避けるために」 遺言書を残す必要性についてはたくさんの専門家や相続を経験された方が仰っております。当事務所でも遺言書は残しておいた方が良いものと考えますが、すべての人が遺言書を残す必要があるのでしょうか?

こちらでは遺言書を残すべきか否かを考えるための一助になればと、遺言書について考えてみます。

 

遺言書を残さないとどうなる?

もし遺言書を残さなければどうなるのでしょうか。それは「法律で定められた相続」が開始だけです。法律で定められた相続と遺言書での相続は内容はや手続きは変わっては来ますが、遺言書を残さなければ妻や子供に遺産を分けられない、第三者に不当に遺産を横取りされる、というような事はまずありません。

相続について詳しくはこちら 

遺言書はすべての人が残すべきか?

遺言書の必要性はすべての人に当てはまるのでしょうか?答えは人それぞれなので断言する事はできませんが、当事務所では「必要のない方は残す事はない」と考えます。もちろん遺言書を残す意義はすべての方に当てはまりますが、無理して残す事はありません。 

  • 残さなくても問題ない例

それでは遺言書を残す必要のない人はどういった方でしょう。いくつか例を挙げてみます。

 

◆相続人を信頼する気持ちが強い方。

相続は亡くなった方への気持ちと具体的な遺産との間で気持ちが動揺した中で行われますので、どんなに仲が良い親族間でもトラブルの可能性は否定できません。しかし、そのようなトラブルも自分の親族であれば乗り切れるだろうと信頼できる方はあえて遺言書を残す必要なないでしょう。

 

◆なるようになる事が望ましいと考える方。

遺言書を作成しても自分はいつ亡くなるかわかりません。自分が亡くなる時には遺言書を残した時とは状況が変わっている事も多々あります。遺言書を残して自身が亡くなった後の事を気にするより、物事はなるべくようになる物であると考える方はその考えを尊重する事も大切です。

 

◆遺言書に興味が無い方。

遺言書は法律で定められた書類です。もし法律の方式を満たさなければ法的な効果は発生しません。そのため、遺言書を残すことに興味は無いが、残さなければならないと思われた方が不用意に遺言書を残すと、その遺言書がトラブルの種となってしまう可能性があります。もし遺言書を残すのであれば少しでも興味を持ち、遺言書の書き方の勉強をする事お勧めいたします。

 

  • 残した方が良い例

遺言書を残した方が良い例はどのような場合でしょう。

 

◆法律で決められた遺言書の効力を活用したい方。

遺言書を残した場合、遺言書を残さないで亡くなった場合とは違う相続を行う事が可能です。これらは法律で決められた事項なのですが、以下のような事を希望する場合は遺言書を残さなければなりません。

 

・相続人以外の人へ遺産を残したい(遺贈)

・法定相続分とは違う相続分で遺産を残したい(相続分の指定)

・認知をしたり、後見人を指定したい

など。

遺言書の法定事項はこちら

◆親族間でのトラブルを避けたい方。

どんなに仲が良い親族でも、相続が発生した当時の状況次第では揉め事が発生してしまう危険性があります。そのように、もし親族間のトラブルを防止したいのであれば遺言書を作成する事は大きな効果があると思います。亡くなられた方が最後に残した意思は残された者にとってとても大きな意味を持つ事でしょう。

 

◆自分の遺産が少ない方。

「財産が少ないから遺言書は必要ない」と思われる方は大勢いらっしゃるでしょう。しかし、少ないからこそその財産をどう分けるかは難しくなってきます。特に少ない財産の中にも分ける事が難しい不動産があるような場合はより遺言書の意味は大きくなる事でしょう。

 

◆残された方へメッセージを残したい方。

亡くなられた方が最後に残されたメッセージは残された方にとって大きな意味を持つ事でしょう。それは残された方の死別の傷を癒す事にもつながります。残された方の気持ちを思えば、メッセージを残しておく事も悪くはないと思います。

※法的な事項を盛り込むには遺言書としての形式を踏まえる必要がある事に注意が必要です。

 

◆相続人がとても多い方

相続人が例えば0人もいる場合、その10人で遺産分割協議を行う事はとても大変です。特に兄弟への相続の場合、相続人がお互いに顔も知らなければ住所も知らない、時には存在すら気づいていない、と言う事があります。そのような疎遠な兄弟や代襲相続の甥姪などが遺産分割協議を行う事はものすごく難しいでしょう。しかし、遺言書で配偶者などへ相続させる事を書いておけば手続きはぐっと楽になります。

手続きの困難さから見た場合、相続人が多い方、特に兄弟への相続となる場合は遺言書を書いておく事をくお勧めします。

 

 

遺言書を残さない場合、残す場合の注意点

遺言書を残すも残さないもご自身の考え次第ですので、どちらを選択しても責められる事はありません。しかし、それぞれの選択で注意しておく事はどのような事でしょう。

  • 遺言書を残さない場合の注意点

遺言書を残さないのであれば遺言書について注意する事はありませんが、基本的な事でも良いので相続の仕組みを知っておく事が良いのではないでしょうか。誰にどのくらいの遺産が行くのかだけでも知っておく事は悪い事ではないでしょう。

また、もし可能なら遺言書についても少し知っておいていただければより良いでしょう。何も知らずに残さない選択をするより、知った上での選択であれば後悔する事はありません。もし遺言書を知る事で考えが変わる事もあるかも知れません。

 

  • 遺言書を残す場合の注意点

遺言書を残す場合はどのような事に注意すべきでしょう。

 

◆遺言書の法定事項がある事を考える

もしメッセージの残すだけであれば法的な遺言書という形を取る必要はありません。そのため手紙でもビデオレターでも良いでしょう。しかし、もし法定事項をひとつでも盛り込むのであれば遺言書としての形式を踏まえるように注意しましょう。法定事項はたくさんあり内容も複雑ですので、とりあえずは遺言書には法律で定められた範囲内でしか作成できない事だけでも把握しておきましょう。


◆残し方、書き方を考える。

遺言書を作成するにあたり、トラブルの回避という目的がある方は遺言書の残し方にも注意しましょう。自分で作成する「自筆証書遺言」より、公証人が関与する「公正証書遺言」で残す事がより安心です。公正証書遺言は手数料がかかりますが、せっかく遺言書を残すのであれば無駄ではないと思います。

自筆証書遺言、公正証書遺言とは

最後に

 

  • 自分の死後、どなって欲しいかを考える

遺言書を残場合も残さない場合も、自分が亡くなった後にどのような相続がされるか考えてみましょう。そして遺言書を残す場合はどのようになって欲しいかをを考えてみましょう。自分の希望をどのように遺言書に表現するのかは、遺言書を残す人次第です。もし法定事項に沿った表現になっているか迷ってしまう場合は専門家に相談すれば良いと思います。

遺言書を残すべきか残さないべきかはご自身の判断であるので答えは出ませんが、どちらを選択しても後悔の無いような準備をしていただければと思います。

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