遺言書の書き方

遺言書は相続の対策としてはとても有効です。遺言書のメリットやデメリットを把握し、相続人の事を考えて作成すれば、より良い財産の分配の助けになりますし、不要なトラブルの回避にもつながります。しかし気をつけなければいけない事は、遺言書は法律で内容が定められた書類です。そのため、どのような事を記載すれば法的な効力が発生するのか、また効力が無いのかをしっかり把握した上でないと思わぬトラブルを招く事となります。こちらではその遺言書の法的効力について例文を使ってご案内します。

 

 

遺言書の法定項目

遺言書は以下の10点に関して、記載をすれば法的な効力が発生します。しかし、これ以外の事項については記載を行ったとしても問題はありませんが、法的な効果は発生することはありません。

 

<相続に関する事>
@相続人の排除、排除の取り消し
A相続分の指定、指定の委託、特別受益者の相続分の指定
B遺産の分割方法の指定、指定の委託、分割の禁止、共同相続人の担保責任の指定
C遺留分の減殺方法の指定

 

<相続以外の遺産の処分に関する事>
D遺贈
E財団法人設立のための寄付
F信託の設定

 

<身分上の事>
G認知
H後見人、後見監督人の指定

 

<遺言執行に関する事項>
I遺言執行者の指定および指定の委任

 

 

遺言書の書き方 〜例文と解説〜

「相続させる」旨の遺言と、上記の10項目についての解説をいたします。実際の遺言書をイメージ出来るように例文も併せてご紹介いたします。

 

 

(基本)「相続 させる」旨の遺言

例文

遺言者は下記の土地を妻Aに相続させる。

 

        記

(土地の表記)

所在   ○○区○○町○丁目

地番   ○番○

地目   宅地

地積   ○○○.○○平方メートル

<解説>

特定の遺産を特定の相続人に相続させる遺言は「○○に□□を相続させる。」と記載する。これにより法定相続分とは異なる相続分の指定を行い、また特定の遺産を相続人に相続させる事ができます。なお、相続人ではない者を指定した場合は遺贈した者と解されます。(遺贈の場合は「遺贈する」とした方が後の混乱を回避できます。)

遺産の指定は曖昧にせず、土地の登記などに従い必ず特定できる記載を行います。動産などは特定できる客観的な情報は少ない場合が多いのですが、それでもなるべく特定できるような記載を行います。

 

 

@相続人の排除、排除の取り消し

例文@

長男Aは平成○年○月から遺言者に対して継続して暴行を行うなどの虐待をした事から、遺言者は長男Aを相続人から廃除する。

<解説>

相続人の廃除は以下の廃除事由が必要です。

◆被相続人に対する虐待

◆被相続人に対する重大な侮辱

◆その他の著しい非行

この事実があった場合は遺言にて相続人に廃除を行う事ができます。しかし、これらの事実が無かったとの相続人からの主張があれば、遺言書が逆にトラブルの元となってしまいます。そのため、廃除事由の詳細な記載の上、公正証書での遺言の作成や、その他の有効な書類を別途作成しておくなどの対策を行う事が望ましいでしょう。

また、廃除の手続きのため、遺言執行人を指定する事をお勧めします。

 

 

A相続分の指定、指定の委託、特別受益者の相続分の指定

例文A−1> 〜相続分の指定〜

遺言者は次の通り相続人の相続分を指定する。

妻A   3分の1

長男B  3分の1

次男C  3分の1

<解説>

本来は法定相続分は妻2分の1、子供二人は4分の1ずつの相続分ですが、遺言にて相続分を指定しています。これにより法定相続分とは異なる相続分を指定する事ができます。しかし、この相続分の指定のみではどの財産を誰が相続するかが不明なため、財産の状況により相続人の間での遺産分割協議が必要となる可能性がある事に注意が必要です。

 

 <例文A−2> 〜指定の委託〜

遺言者は次の者に対し、相続人の全員の相続分の指定を委託する。

住所    東京都練馬区○○町 ○丁目○番○○

職業    行政書士

氏名    甲山 乙男

生年月日 昭和○年○月○日

<解説>

相続分の指定を第三者に委託する場合です。委託された者は相続開始後に相続分の指定をする事となります。

 

 <例文A−3> 〜特別受益者の相続分の指定〜

遺言者は長男Aに対しマイホームの資金として1000万円を贈与したが、次男Bに対してはそのような贈与をしていないため、長男Aの特別受益を考慮し、長男Aの相続分を0とする。

<解説>

相続人の一人に対して行った特別受益を考慮した場合の相続分の指定です。しかし、特別受益を考慮して決めた相続分でも長男の遺留分が侵害される場合、遺言自体は効力を持ちますが、長男の遺留分減殺請求権が無くなるわけではない事に注意が必要です。

 

 

 B遺産の分割方法の指定、指定の委託、分割の禁止、共同相続人の担保責任の指定

  <例文B−1> 〜遺産の分割方法の指定〜

遺言者は遺産分割協議にて、別紙の遺産目録の遺産を次のとおり分割するよう、分割方法を指定する。

1、不動産のすべてについては長男Aが取得する。

2、上記1以外は次男Bが取得する。

 <解説>

遺産をどのように分割するかを指定した遺言です。この場合は相続人の遺産分割協議を必要とし、協議の結果で遺言の内容に従った帰属が決定します。

また、遺産の分割方法は「現物分割」「換価分割」「代償分割」があり、これらを指定する事も可能です。

 

 <例文B−2> 〜分割の禁止〜 

遺言者は遺産の全部において、その分割を相続開始の時から5年間禁止する。

<解説>

遺言者は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずる事ができます。

 

例文B−3> 〜共同相続人の担保責任の指定〜

長男Aが取得した動産について数量の不足や破損などの瑕疵があったとしても、他の相続人は担保責任を負担しないものとする。

<解説>

民法には「各共同相続人は他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保責任を負う」、という条文があります。これは共同相続人の一人が取得した物に思わぬ不良があったり、数が足りなかったり(これを瑕疵といいます)といった事態が判明した場合、他の共同相続人はその瑕疵を補うための保証をしなければいけません。理由としては共同相続人の間での遺産の分割に想定外の不平等が起こらないようにするためす。

例文はこの法律で定められた担保責任を無くすものです。遺言書に記載すれば無くすだけでなく、負担を軽くする事や重くする事も可能です。

 

 

C遺留分の減殺方法の指定

例文C> 

遺言者は遺留分の減殺は預貯金から行うものと定める。

<解説>

遺留分の侵害が起こった場合、侵害された相続人は遺留分減殺請求権を行使する事ができます。この場合、遺留分の減殺請求の対象を土地や株式などとされた場合、財産の散逸が懸念される場合は、遺留分の減殺を行う順序を指定する事ができます。しかし、法定された減殺の順序(遺贈や贈与がある場合)は法律の順序に従う必要があるため、遺言でも変更する事はできません。

 

 

D遺贈

例文D−1> 〜特定遺贈〜 

遺言者は所有する次の土地を遺言者の孫Aに遺贈する。

 

(土地の表記)

所在   ○○区○○町○丁目

地番   ○番○

地目   宅地

<解説>

相続人以外の者への遺産を分割する場合の例文です。特定した財産を指定して分割する場合を「特定遺贈」と言います。特定遺贈は相続の開始により帰属が移転する事は相続に準じていますが、農地の場合の許可や賃借権の賃貸人の許可などは通常の贈与のような手続きが必要となる点で注意が必要です。

また、土地の登記なども相続と異なる手続きが発生するため、遺言執行人を指定しておく事が望ましいでしょう。

 

例文D−2> 〜包括遺贈〜

遺言者は遺言者の有する一切の財産を孫Aに包括して遺贈する。

<解説>

例文D−1とは異なり、相続財産の何を相続するかを特定せず、包括的に遺贈する場合の例文です。包括遺贈はプラスの財産のみでなくマイナスの財産も引き継ぐ事や限定承認・放棄など、相続人と同一の権利義務を負う事となります。しかし、相続人と異なる点として遺留分や代襲相続が無い点に注意が必要です。

 

 

E財団法人設立のための寄付

 ※省略

F信託の設定

 ※省略

 

 

G認知

例文G

遺言者は○○県○○市○○町○丁目○番(本籍)のAが現在懐胎している子を認知する。

 認知は遺言にによってする事ができる。認知後の届け出などの手続きが必要となるため、遺言執行者を指定しておきましょう。

なお、被相続人が亡くなってから3年間は子の側から認知を求める事ができます。認知できる子がいるにも関わらず遺言で認知を行わず遺言者が亡くなった場合、死後に認知を求める訴えにより相続関係が不安定となる可能性があります。

 

 

H後見人、後見監督人の指定

例文H

遺言者は未成年である長男Aの未成年後見人として、次の者を指定する。

住所    東京都練馬区○○町 ○丁目○番○○

職業    ○○○○

氏名    A

生年月日 昭和○年○月○日

<解説>

未成年者の後見人が亡くなった後の事を考えて、遺言にて未成年後見人を指定する事ができます。もし子の指定が無い場合は、親族の申立てか裁判所の職権にて後見人が選任されます。もし、自身の後に就く後見人に自身の信頼のおける人物を指定したい場合は遺言にてしてしておく事がよいでしょう。

 

 

I遺言執行者の指定および指定の委任

例文I-1

遺言者は本遺言の遺言執行者として、以下の者を選任する。

住所    東京都練馬区○○町 ○丁目○番○○

職業    行政書士

氏名    甲山 乙男

生年月日 昭和○年○月○日

 <解説>

 遺言執行者は遺言者の代理人として遺言内容を実現させるための人物です。遺言執行者が選任された場合はたとえ相続人であっても相続財産の勝手な処分はできなくなります。

遺言執行者は必ず指定しなければならないわけではありませんが、遺言の内容によっては指定しなければならないもの、指定をした方が好ましい物があります。前者は「認知」「廃除」を指定した場合であり、後者は「遺贈」などの場合で、登記などの許可の際に遺言執行者が居るとスムーズに手続きが可能となります。

 

I-2

第○項の遺言執行者2名は、遺言執行者としての権限を各自単独で執行することができる。

 <解説>

遺言執行者は遺言書にて複数の人を専任する事ができます。遺言執行者も信頼できる人を複数専任しておけばより安心です。

この場合、遺言の執行は原則として遺言執行者全員で多数決により決めなければなりません。多数決であればより確実な執行が望めますが、迅速な手続きを優先させる場合は遺言書にはそれぞれ単独で執行できる旨を記載しておく事がよいでしょう。上記のような条文を遺言者を複数選任した場合の条文の下に記載しておけば、それぞれの遺言者は単独で遺言の執行ができ効率的です。

 

 

※注意!

以上の例文は書かれる方の個々の状況を踏まえたものでありません。遺言書を作成する際は記載される方の状況等を十分踏まえた上で作成頂きますようお願いいたします。

 

 

自分で書く遺言書の怖さ

自筆証書遺言書を作成する場合、思わぬ落とし穴が待っているかもしれません。遺言書を書き始める前にこちらもご参照ください。自筆証書遺言は手軽にマイペースで作成できることが大きなメリットです。しかしその怖さを作成前にしっておく必要があります。自筆証書遺言の失敗により苦労するのは相続人です。そして、当事務所では自筆証書遺言だからこそのトラブルを何度も目の当たりにしています。遺言書を残された方はその時はすでに亡くなられており、後悔することも許されません。

 

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