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LGBTの方々はもしパートナーを見つけ、今後ずっと一緒に暮らしていくこととしたとしても、現在の日本の憲法や法律の下では「結婚」をすることは認められません。これによりLGBTのカップルが「他者を信頼し寄り添って生きていく」という意味では男女の夫婦と同じであったとしても結婚をすることができず、法的には大きな違いが出てしまいます。
こちらページでは、現時点で結婚をすることが認められていないLGBTのカップルが、結婚をした男女と同様の法的権利を得られる方法をご紹介いたします。実際は以下にご紹介する契約等だけでは結婚をした男女と同じ状態となるまでには至りませんが、少なくとも法律では結婚が認められないカップルに、限定的ではあっても法的な立場を与えるという意味では利用を検討する価値があるものと考えます。
準婚姻契約(パートナー契約)
婚姻届を提出して結婚(以下、法律婚)をした男女は法的な夫婦となりますが、法律婚をするとお互いに夫婦間の義務が発生します。この義務はあまり意識はされませんが、民法という法律に定められています。そして、もし離婚となるとお互いに慰謝料の請求や財産分与を行うことができます。しかし、これらの義務や権利は法律婚をした夫婦に限られ(事実婚の場合は後述)、例えばまだ付き合っているだけの男女の間には発生しませんし、法律婚が認められないLGBTにも認められません。
準婚姻契約はカップルの間で法律婚と同様の権利や義務が発生するよう、お互いに事前に契約をしておくものです。これにより法律婚ができない立場のカップルでも互いに義務と権利を認め合うことが可能です。
内容
準婚姻契約内容のは以下のようなものとなります。
<義務に関することの例>
・貞操義務
・同居、協力、扶助の義務 など
<権利に関することの例>
・離婚時の財産分与請求権
・離婚時の慰謝料請求権 など
効力
互いに準婚姻契約を結んでおけばお互いに強制力が働きます。契約書に記載した義務を果たさなければなりませんし、それが果たされなければ離婚の理由となり慰謝料の請求などが可能です。
注意点は準婚姻契約は当事者間を縛るのみの効力であり、第三者に対してお互いが夫婦であることの証明とはならないことに注意が必要です。LGBTのカップル間で契約を結び、お互いの権利義務が法律婚の夫婦と同じレベルとなったとしても、第三者はそれをもって法律婚上の夫婦として扱う根拠とはなりません。
しかし、準婚姻契約を結んでいることで権利義務が明確になり、カップルがより婚姻の意思を強く持っていることの証明になる場合もあるでしょう。また、準婚姻契約、もしくはこれに類似した契約書が渋谷区で条例が制定された「パートナーシップ証明」の取得には欠かせない契約となります。
任意後見契約
任意後見契約とは、もし自分が判断能力が衰えてしまった、もしくは無くなってしまった場合、信頼おける相手に、自身の代理を行ってもらうことの約束をあらかじめしておく契約です。もし、法律婚の夫婦であれば、お互いに後見人を申立てる権利があり、また自身が後見人となることは難しくありません。
しかし、LGBTのカップルの場合、パートナー万が一のことがあっても後見人を申立てることができず、またパートナーの親族の理解がなければ自身が後見人となることができません。そうなると当事者間では夫婦と同様の気持ちであったにも関わらず、判断能力が衰えてしまうという事態により、パートナーとの距離が開かざるを得ない状態となってしまいます。
そこで、LGBTのカップルがお互いに任意後見契約をあらかじめ結んでおけば、パートナーにもしものことがあった場合、自身が優先的に後見人となり、寄り添うことが可能です。もちろんお互いに契約を結び合っておけば、自分に何かあったときはパートナーが自身の力になってくれます。
任意後見契約は公正証書にて作成しなければなりません。またその後、任意後見の登記をしなければなりませんが、これは公証役場が手続きをしてくれるため心配はいりません。
任意後見契約はもしもの時のためにもなりますし、お互いが信頼し合っているということも対外的にアピールできます。また、渋谷区で条例が制定された「パートナーシップ証明」の取得には欠かせない契約となります。
※「判断能力が衰えてしまった、もしくは無くなってしまった場合」とは、病気や事故で脳を損傷してしまった場合や、認知症などになってしまった場合が考えられます。
死後事務委任契約
死後事務委任契約はパートナーが亡くなったあとのお葬式や法要を行うため、お互いに約束をしておく契約です。もし法律婚の夫婦や親族であれば当然に亡くなられた方のお葬式や法要を行うことができます。LGBTのカップルの場合、もしパートナーにお葬式などの死後の事務を取り仕切ってもらいたいと思ってもいても、親族の反対などがあればうまく進めることはできないでしょう。
そのため、もしパートナーに死後のことも任せたいと思っている場合は死後事務委任契約をあらかじめ結んでおくことで、自身の意思表明と法的な立場をパートナーに与えておくことがことが重要です。
なお、先にご紹介しました準婚姻契約や任意後見契約は原則的にパートナーが亡くなるまでの契約となりますし、また法的な性質も異なります。亡くなった後のことは死後事務委任契約として別契約にしておくことが望ましいでしょう。
事実上の夫婦(事実婚)との違い
籍は入れていないが事実上夫婦と変わらない生活を送っている男女を事実上の夫婦と呼ばれます。法律婚に対し事実婚と一般的に言われていますが、LGBTのカップルとの違いはどこでしょう。LGBTのカップルは事実婚として認めてもらえるのでしょうか。
LGBTのカップルと事実婚との違う点
事実婚は男女に限定されます。それはやはり法律では男女の間でしか婚姻が認められていないためであり、LGBTのカップルの間では現時点で事実婚は認められません。事実婚はある一定の範囲であれば法的に夫婦として認められ、例えば社会保障などでは事実婚でも対象となりますし、離婚のときの財産分与や慰謝料も認められます。しかし、LGBTのカップルの間では現時点では個別の法律においてもとしても夫婦としての扱いが認められるということはありませんので、自分たちでお互いのためにも権利義務を確保していく必要があるでしょう。
LGBTのカップルと事実婚との同じ点
事実婚はある一定の範囲では夫婦として認められますが、しかし法律で認められた夫婦ではないため、基本的にはやはり他人として扱われます。そのため法律婚をした夫婦では当然の権利である相続について、事実婚では相続に関する権利は一切認められていません。LGBTのカップルも事実婚と同様で、当然に相続は認められません。自身が亡くなった時にパートナーに財産を残すことができません。しかし、相続の問題は遺言書を残すという方法である程度の解決が可能です。LGBTのカップルも事実上の夫婦も相続という点に関しては自衛のための手段を生前に講じておかなければなりません。
パートナーシップ証明書
渋谷区の条例で決まったLGBTのカップルに対して発行されるパートナーシップ証明書。これは渋谷区長がLGBTのカップルに対し、そのカップルが夫婦に準じた関係であることを証明し、また、渋谷区内の企業や公的機関は証明書を得たカップルに対してその旨を尊重するよう掲げた条例です。
パートナーシップ証明書の発行には上記でご案内しました「準婚姻契約(もしくは類似契約)」と「任意後見契約」を結ばなければなりませんが、これは法律上、お互いに権利義務を持ち、将来のことも約束し合ったことを証明するためであると考えられます。任意後見契約は原則公正証書にて行われるものであり、また、準婚姻契約(もしくは類似契約)の方も公正証書にて行わなけれなならず、内容は渋谷区にて詳細が指定されるようです。
パートナーシップ証明書の発行にはいくつかの条件があり、LGBTのカップルであっても気軽に取得できるものではありませんが、その分、大変意義があるものと思います。もしこのような条例が全国に広がればLGBTのカップルに対する特例として事実上の夫婦のような権利が与えられるような法改正もあるのかもしれません。
カミングアウトできないカップル
渋谷区のパートナーシップ条例の制定を機に一般にも行政にも理解が深まりそうなLGBTではありますが、やはりカミングアウトできないでいる、またカミングアウトするつもりはないカップルもいるでしょう。そのようなカップルでも必要な契約は他人に知られずに行うことが可能です。一般的に夫婦として認められることまでは望んでいないが、お互いのために法的な契約を結びたいと思われる方でもこちらで紹介しました契約等を利用することは可能です。
サポートのご案内
こちらでご紹介させていただいた契約などはLGBTに限らず、必要であればどなたでも利用が可能です。当事務所ではこれらの契約書の作成のサポートをさせていただきます。お気軽にご相談ください。
<関連ページのご紹介>
※LGBTとは
LGBTとは女性同性愛者(レズビアン)、男性同性愛者(ゲイ)、両性愛者(バイセクシュアル)、そして性同一性障害含む性別越境者など(トランスジェンダー)の頭文字をとった略語です。
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